【アルファロメオ ジュリエッタ試乗】官能のDNAを継承。走りが楽しいハッチバック

日本導入から早5年。街中で見掛けるアルファロメオも世代交代が進み、現在ではジュリエッタが主流になった気がします。ちょっとばかり目新しい話題に乏しかったアルファロメオですが、ジュリアの日本発売が正式に発表され、今後の勢力図の変化が気になるところ。でも、ちょっとくらい時間が経っていても、アルファロメオの魅力は少しも薄れないはず…とばかりに、マイナーチェンジを受けたジュリエッタのキーを受け取りました。

試乗車は、イタリア語で“速い”を意味するベローチェ。排気量1750(正確には1742)ccのDOHCエンジンやら、ジュリエッタやベローチェというネーミングやら、往年のアルファロメオ・ファンからすると、その響きだけでも心をつかまれるのではないでしょうか。そんな演出にニヤリとしながら、まずはクルマを遠くに近くに眺めます。

先のマイナーチェンジは、グレード展開の見直しのほか、エクステリアとインテリアの意匠変更が主なメニュー。エクステリアでは、フロントグリルが横バーからハニカム形状になり、“GIULIETTA”エンブレムの書体が変わりました。一方のインテリアは、メーターパネルの文字やエアコンなどのイルミネーションといったディテールが変更されています。

一方、メカニズムに関しては、基本的にキャリーオーバー。ベローチェは従来モデル「クアドリフォリオ ヴェルデ」のそれを踏襲しています。つまり、最高出力240馬力、最大トルク34.7kg-mを発生する1742cc直4ターボ、2ペダル式の6速デュアルクラッチトランスミッション“アルファTCT”、そして“ALFA D.N.A.”と呼ばれるドライブモード切り換えシステムも受け継いでいます。

と、予習を済ませてドライバーズシートに収まります。レザーの手触りはソフト、そして表面に近い部分のクッションも柔らかいタッチですが、ストロークがありつつ芯はしっかり、というタイプでしょうか。座り心地は好みもあるとは思いますが、サポート性は良好ですし、儚(はかな)げだけど“ちょっと”ぜいたくな感触は、新車で手に入れた方の特権かもしれません。

エンジンを始動すると、アイドリングでも「そうそう、この感じ!」というアルファロメオらしいサウンドが響きます。かつてのアルファV6のように高音で謳うタイプではありませんが、アイドリングから低速までは「ルルル…」という粒のある音、そこからアクセルペダルを大きく踏み込むと「グォ」と吠えるかのように音の粒がそろっていくのです。

かつて、1980年代から2000年頃まで搭載された、出自の異なるいくつかの4気筒エンジンも、アルファロメオの手にかかると「イイ感触だな」、「イイ音だな」と感じさせてくれる絶妙のセッティングでしたが、いかんせん、いずれも「あともう少しパワーもあればなぁ」と感じることがありました。しかし、ジュリエッタ ベローチェはというと、街中はもちろん、起伏のあるワインディングや高速道路でも、そんな歯がゆい思いを抱くことはありませんでした。

そして、車両のダイナミックパフォーマンスを切り替えるALFA D.N.A.は「ダイナミック」、「ナチュラル」、「オールウェザー」の3モードが設定されており、モードに応じてエンジンの出力特性やレスポンス、アルファTCTの変速ロジック、トラクションコントロール機能の塩梅までが変化します。

モードをダイナミックに切り替え、アップダウンのあるワインディングを走りましたが、その感触は全域でパワフル。現代のターボエンジンですから、蹴飛ばされるような“二段加速”こそありませんが、1.4トン強のボディに240馬力は十分過ぎるほど。抑揚に富んだサウンドを聞きながら、コーナーをひとつひとつクリアしていくのは、掛け値なしに楽しい! 作業であるのは間違いありません。

また、しなやかなサスペンションの動きやスムーズなステアリングの反応も、アルファロメらしい楽しさを感じさせる重要な要素のひとつ。街中で連続する右左折、舗装のうねった峠道でも、4本のタイヤはしっかりと路面をつかみ続けますし、ステアリングも切ったら切った分だけノーズがインに向きを変えます。不足なく、過剰でもない、こうした人の感覚に沿った走りの味つけこそが、アルファロメオの美点といえるでしょう。

個性的なスタイルやインテリアの仕立てといった趣味性、そして何より、ドライビングの楽しさという“官能性”を優先したジュリエッタ。「フツーのクルマでは満足できない!」人は、ぜひ一度、味わってみるべきモデルといえるでしょう。

<SPECIFICATIONS>
☆ベローチェ
ボディサイズ:L4350×W1800×H1460mm
車両重量:1440kg
駆動方式:FF
エンジン:1742cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:240馬力/5750回転
最大トルク:34.7kg-m/2000回転
価格:424万4400円

(文&写真/村田尚之)


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