【スバル フォレスター試乗②】内外装は1クラス上の上質さ。自慢のSGPは使い勝手にも効く:岡崎五朗の眼

■視界性能の追求はスバルならではのこだわり

――続いて、新型フォレスターのエクステリアデザインについてご意見を聞かせてください。パッと見た時の変化に乏しい新型のデザインに関して、SNS上などでは賛否両論が飛び交っています。

岡崎:写真を見ただけの段階では、正直「変わり映えしないデザインだな」と思っていた。同様に、新型フォレスターの写真を見た人の中には「これってホントに新型なの?」と疑問に思った人も少なくないはず。それくらい、新型のデザインは旧型に酷似しているよね。特にフロントマスクは、一見しただけではほとんど同じに見える。それと、サイドのプロポーション、特に“ウインドウグラフィック”と呼ばれる窓の形状などは、変わっていないように感じる。

でも実車をよく見てみると、サイドの造形などは旧型よりもはるかに躍動的。先代モデルは、ボディサイドを前後に走るキャラクターラインが真っ直ぐ引かれていたけれど、新型ではそれが、リアへ行くに従って跳ね上がるデザインに変わっている。今回、初めて陽光の下で新型フォレスターを見たんだけど「思いのほか変わっていた」というのが正直な感想だね。

――新旧の識別ポイントとしては、タイヤ周囲にあしらわれた樹脂製の黒いフェンダーモールの有無と、リア回りのデザイン、といったところが大きいでしょうか。

岡崎:そうだね。リアスタイルは結構変わっている。一見しただけでは同じにしか見えなかったけれど、新旧をじっくり見比べると、新型フォレスターはよりエレガントでスポーティなデザインになっているね。

――エクステリアのデザインが大きく変わらなかった結果なのか、新型フォレスターは先代モデルと同様、シートに座った時の視界が全方位とも非常に良好でした。

岡崎:視界がいいことのメリットって、結構、大きいと思う。カーブが続くような山道や、今回の試乗コースにあったオフロードでも、ドライバーは前方の状況を確認しやすいから、安心してドライブできるよね。加えて新型フォレスターは、左右や後方の視界もいいから、安全性の向上にもつながっている。

――試乗中、リアシートに座って撮影していたのですが、開放感が高くて、とても心地良く移動できたのが印象的でした。

岡崎:最近は、スポーティでカッコいいデザインと引き換えに、リアシートが“穴蔵”みたいになってしまったクルマも少なくない。囲まれ感があって、そういうシートの方が好きという人も中にはいるけれど、開放感という点ではやはり劣る。家族や仲間と移動するためのアシには、そういうクルマは選びづらいよね。

それに、バックする時や車線変更の際などに、デザイン重視の太いピラーが逆に死角となって、ドライバーが周囲の状況を把握しづらいクルマも増えている。視界を補完してくれるカメラの精度は、近年、確かに上がってはいるけれど、やはりドライバーが自らの目で状況確認できることのメリットは、何物にも代えがたい。

その点、新型フォレスターは、歴代モデルや他のスバル車と同様、視界に対して徹底的にこだわっている。スバルは昔から“視界性能”をすごく重視してきたメーカーだけど、仮にカメラが付いていなくてもしっかり周囲を把握できる新型は、いかにもスバルらしいクルマだといえるね。

――でも、そうした真面目なクルマづくりというのは、世の中に受け入れられないケースも多いですよね。

岡崎:なかなか分かりにくい部分だもんね。だからこそ新型フォレスターは、エクステリアデザインがちょっと地味に感じるところが、今後の課題になるのかなと思う。よくよく見ていくと、新型のデザインはかなり良くなったけれど、視覚面でのアピールがあまり強くないんだよね。

――特に今、ライバル各車のデザインがかなり派手になっていますからね。

岡崎:現状の新型フォレスターは「流行りのSUVに乗りたい」とか「SUVってカッコいいよね」と思っている人にとって、勢いで飛びつけるようなクルマではない。何かもう少し、デザイン的な引っかかりのようなものがあれば、これまでスバル車に乗り続けてきた人はもちろん、他社のクルマに乗っていた人も、より多く惹きつけられると思うんだ。

個人的には、タイヤとホイールはもう少し径が大きい方が、新型フォレスターのエクステリアデザインにはマッチすると思う。新型は、5.4mの最小回転半径を死守するために、あえて控えめなサイズを選択してきた。だから、例えば前編でも話題に上った「STIスポーツ」みたいなスポーティグレードが、日常の使い勝手を多少犠牲にしてでも大径のタイヤとホイールを履いて登場してきたら、誰もが「カッコいい!」と感じるクルマになると思う。

もちろん今の状態でも、新型フォレスターを実際に買って使っていくと、満足度はかなり高いはず。でも、使いやすいなとか、いいクルマだなって感じるのは、人間の左脳での判断に過ぎない。右脳は何か違うものを求めてしまうものだよ。

――確かに、新型フォレスターは理詰めで開発されたクルマ、という印象が強いですね。

岡崎:だから開発陣には「もっとバカになれ!」、「たまにはハメ外そうよ」といいたいな。この先、人の右脳を刺激するグレードやバリエーションが追加されると、新型フォレスターの魅力はより一層、高まっていくと思う。ベースはものすごく“いいモノ”に仕上がっているからね。

――デビューをゴールとするのではなく、ここをスタート地点として、新グレードや新しい個性をプラスしていけると、一段と魅力あるクルマに成長するでしょうね。

<SPECIFICATIONS>
☆アドバンス
ボディサイズ:L4625×W1815×H1715mm
車重:1640kg
駆動方式:4WD
エンジン:1995cc 水平対向4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
エンジン最高出力:145馬力/6000回転
エンジン最大トルク:19.2kg-m/4000回転
モーター最高出力:13.6馬力
モーター最大トルク:6.6kg-m
価格:309万9600円

<SPECIFICATIONS>
☆X-BREAK
ボディサイズ:L4625×W1815×H1730mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:2498cc 水平対向4気筒 DOHC
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
最高出力:184馬力/5800回転
最大トルク:24.4kg-m/4400回転
価格:291万6000円

<SPECIFICATIONS>
☆プレミアム
ボディサイズ:L4625×W1815×H1715mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:2498cc 水平対向4気筒 DOHC
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
最高出力:184馬力/5800回転
最大トルク:24.4kg-m/4400回転
価格:302万4000円

(文責/&GP編集部 写真/SUBARU)


[関連記事]
【試乗】スバル「アイサイト」が大幅進化。目指したのは“本当に使える!”性能

【スバル BRZ STIスポーツ試乗】意のままに操れて乗り心地は極上!大人に似合うスポーツクーペ

【オトナの社会科見学】スバル・ドライビング・アカデミーでテストドライバー1日体験!


トップページヘ

この記事のタイトルとURLをコピーする