遊びにガンガン使える!走り&安全性が大幅進化の三菱「デリカD:5」はまさに敵なし

■独特のサイズが実現する優れた居住性と積載力

デリカD:5を語る上で、何よりもまず触れておきたいのがボディサイズ。他のミニバンと比べると、デリカD:5がいかに独自のポジショニングにあるかがよく分かる。

デリカD:5のボディサイズは、全長4800mm、全幅1790mmで、他の背の高いミニバンと比べると、大き過ぎず小さ過ぎない絶妙なサイズ。例えば、トヨタの「ノア」、「ヴォクシー」や日産「セレナ」は、いわゆる“5ナンバーサイズ”がウケてミニバン販売ランキングの上位につけているが、デリカD:5はそれらよりひと回り大きい。一方、国内最大級の人気ミニバントヨタ「アルファード」や「ヴェルファイア」と比べると、デリカD:5はちょっと小さい。つまりデリカD:5には、少なくともサイズの面では、直接的なライバルが見当たらないのである。

そんなデリカD:5の各シートに座ると、ノア&ヴォクシーやセレナより広く、それが大勢での快適な移動につながることがよく分かる。

また、デリカD:5の“ちょっと大きい”ボディは、居住性だけでなく積載力においても威力を発揮。3列目シートを畳んだ時はもちろん、3列目シートに乗員が座れる状態でも、シートスライドを活用し、5ナンバーサイズミニバンよりたくさんの荷物を積めるのだ。

この、程良く大きなボディは、荷物がかさばりがちなキャンプを始めとするアウトドアレジャーを楽しんでいるユーザーにとって、とてもメリットがあるはずだ。

しかも、デリカD:5がミニバン界における唯一無二の存在だと断言できる理由は、サイズ面だけにとどまらない。むしろ本筋は、デリカD:5だけが備える独特のキャラクター。それこそが、デリカD:5を特別な存在へと押し上げている。

一般的に、ミニバンのプロモーションでは、家族へのやさしさや、実用性の高さをアピールしたり、高級ミニバンではラグジュアリーな雰囲気を強調したりするケースが多い。しかしデリカD:5は、悪路走破性を得意とする三菱自動車らしく、ミニバンにSUVの特性をドッキング。それを積極的にアピールしている。

例えば、185mmを誇る最低地上高や、凝った4WDシステムなどにより、普通のミニバンでは入り込めないような過酷な悪路にも、デリカD:5なら入っていける。

それはまさに“SUVミニバン”と呼べるだけの実力であり、ミニバンとしては唯一無二の、タフギアなのである。

■キャビンの質感が高まり安全性は劇的に進化

そんなデリカD:5が、新型へと進化した。正確にいえばフルモデルチェンジではなく、車体骨格を先代から受け継いだ“ビッグマイナーチェンジ”モデルなのだが、フロントマスクのデザインが大きくかわったことから、変化は十分に感じられる。

もちろん進化したのは、見た目だけにとどまらない。従来、デリカD:5のウィークポイントとされてきたインテリアの質感を高め、先進安全装備を大幅にアップデートしてきた。

まずインテリアに関しては、インパネのデザインを全面刷新。従来型のそれは、デザインが無骨で、樹脂を多用することでアウトドアギアのような雰囲気だったが、新型では木目調パネルとグロスブロック仕上げのパネルでコーディネートすることで、高級なテイストへと転換。

10.1インチという特大サイズのカーナビゲーション(ディーラーオプション)装着を前提としたデザインは先進的で、スイッチ類のデザインも洗練されたイマドキの水準へと引き上げられている。従来の道具感あふれるインパネも、“デリカらしさ”にあふれてはいたけれど、新型の都会的でクールな雰囲気も悪くない。

イマドキのクルマ選びでは、衝突被害軽減ブレーキを始めとする先進安全機能が欠かせない。しかも、単に付いている、付いていないというレベルではなく、昨今では、どれだけ高性能なのか? ということが比較される時代になっている。しかし、従来のデリカD:5は、基本設計が古過ぎるせいで、衝突被害軽減ブレーキすら搭載されていなかった。

新型は、そうしたウイークポイントを解消。衝突被害軽減ブレーキは、前方を走る車両に対しては約5km/h以上で、歩行者に対しては約5〜65km/hの範囲で作動。また、ドライバーが無意識に車線からはみ出しそうになった場合に、ブザーやインフォメーション画面の表示で注意を促す“レーンデパーチャーワーニング”も採用するなど、予防安全性能が大幅に強化された。加えて、高速道路の走行時に、ドライバーがアクセルやブレーキを操作することなく、自動で前走車に合わせてスピードを調整し、渋滞時には完全停止や停止保持までも行う“アダプティブクルーズコントロール”が採用されたのも、アウトドアレジャーでロングドライブに出掛ける機会が多い人には朗報だ。

■悪路走破性はそのままに舗装路での快適性をアップ

もちろん、そうした内外装のアップデートや先進安全装備の搭載だけでは、従来からのデリカファンは納得しないということを、三菱自動車もしっかり理解している。だからこそ新型は、走行性能もしっかり高めているのだ。

例えばパワートレーン。エンジンの型式こそ従来と同じ“4N14”型だが、圧縮比から燃焼室形状まで大幅に刷新され、中身は別物といえるほど進化を遂げている。また新たに、尿素による排出ガス浄化システムを採用。効率向上を図るとともに、エンジン性能の引き上げも実現している。

余談だが、“新型”デリカD:5に用意されるドライブトレーンは“ディーゼルエンジン+4WD”のみで、2WDと4WDから選べるガソリンエンジン仕様は、改良を受けていない従来型が引き続きラインナップされている。

そんな新型のエンジンに組み合わせられるATは、なんと2段もギヤが追加され、8速へと進化。ファイナルギヤの変更分も含めた変速比では、トップギヤ側が約18%ハイギヤード化された結果、高速巡行時の燃費が向上。さらにローギヤ側も約8%低くなり、悪路走破性もアップしている。このATの進化は、悪路走破性にこだわりを持つデリカファンも納得のものだろう。

他のミニバンとは一線を画すデリカD:5の4WDシステムは、基本構造こそ従来と同じ、「2WD」、「4WDオート」、「4WDロック」というモードを任意に切り替えられる電子制御多板クラッチ式だが、クラッチの改良によって後輪への伝達トルク容量がアップ。また、同システムは他のミニバンでは考えられないほどの悪路走破性を重視しているが、新型では新たに“ヨーレイトフィードバック機能”を追加することで、舗装路でのコーナリングなど、ハンドリング性能アップにも効くシステムへと進化しているのは、大きなトピックといえるだろう。

事実、その走りの進化には、とても驚かされた。

発売前の雪上試乗会は、アップダウンが激しい上に雪が深く積もったコースで行われたのだが、普通のミニバンなら入り込んでいく気にもならないほど過酷なモトクロス用のコースを、新型デリカD:5は涼しい顔で走破。定評のあった悪路走破性が、新型にもしっかり継承されていることを確認できた。

一方、公道での試乗で感じたのは、トータル性能の進化。まず、誰が乗っても違いが分かるほど静かになり、ディーゼルエンジン特有のノイズなども気にならなくなった。また、ATの8速化によってシフトチェンジが滑らかになったほか、尿素による排出ガス浄化システムの採用でエンジンの荒っぽいフィーリングが消え、トルクの立ち上がりも良くなった。

その上、ハンドリング面においても徹底した改良が行われているようで、走行中の車体の揺れが少なく、ドライバーの操作に対する反応が、一段と素直になっていた。従来モデルは「背が高いクルマだし、悪路走破性を重視しているからこんなもんだろう」といった具合に、ドライバーがどこか妥協しなくてはならない走行フィールだったが、新型は舗装路においても気持ちよく走るし、車体の揺れが前後方向にも左右方向にも少なくなったことで、助手席やリアシートに座る同乗者にとっても、より快適なクルマに仕上がっている。

ちなみにカタログ上のスペックでは、最低地上高が従来型の210mmから185mmへ下がっているが、それはアンダーカバーの素材変更に伴う計測位置の違いによるものであり、実車のグランドストロークは従来と同じなので心配は無用だ。悪路走破性をさらに高めながら、舗装路での扱いやすさや快適性もレベルアップさせるという“失うもののない改良”を行ってきた新型デリカD:5。このクルマを孤高の存在としていた、ライバル不在ともいうべき悪路走破性の高さは、新型においても健在だ。

<SPECIFICATIONS>
☆P(8人乗り/グレー)
ボディサイズ:L4800×W1795×H1875mm
車重:1960kg
駆動方式:4WD
エンジン:2267cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:145馬力/3500回転
最大トルク:38.7kgf-m/2000回転
価格:421万6320円

<SPECIFICATIONS>
☆アーバンギア Gパワーパッケージ(7人乗り/ホワイト)
ボディサイズ:L4800×W1795×H1875mm
車重:1950kg
駆動方式:4WD
エンジン:2267cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:145馬力/3500回転
最大トルク:38.7kgf-m/2000回転
価格:420万7680円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)


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