本命は遅れてやってきた!三菱「エクリプス クロス」に待望のディーゼルが登場

■その実力はコンパクトSUVの中でもピカイチ

「街でSUVをよく見かける」、「SUVのニューモデルが増えている気がする」、近頃、そう感じている人も多いのではないか?

実際、SUVは日本で順調に販売台数を伸ばしていて、その市場規模はこの5年で約2倍に拡大。「日本市場ではあまり売れない」として販売を終了したトヨタ「RAV4」が3年ぶりに復活したところ、たちまち「月間販売目標の約8倍を受注した」なんてニュースが話題に上るほど、今やSUVは特別なクルマではなく“定番”となった。

人気である分、選択肢も増えており、結果、ユーザーが「選ぶ際に悩む」状況にさえなってくる。かつては、「SUVだから」という理由だけで選ばれていたかもしれないが、選択肢が増えたことで、デザインや走り、インテリアの使い勝手など、ユーザーの心を打つ“決め手”が求められる。“プラスα”の魅力があれば、当然、多くのライバルの中から積極的に選ばれる人気モデルになれる、というわけだ。

そうした視点から見た場合、エクリプス クロスを選びたくなる理由はなんだろう? それはズバリ、優れた実用性と高機能の4WDシステム、そして、追加されたディーゼルエンジンによるゆとりある動力性能、という3点に尽きる。

エクリプス クロスのライバルは、ホンダ「ヴェゼル」やトヨタ「C-HR」、マツダ「CX-3」、そして日産「ジューク」辺りのコンパクトSUV。それらのライバルと使い勝手を比べると、リアシートの広さでは他のすべてのモデルを上回り、ふたクラス上のモデルに匹敵するほど居住性に優れる。

また、C-HR、CX-3、ジュークよりも、ラゲッジスペースが広いのも美点だ。パッケージング自慢のヴェゼルと比べると、標準状態の荷室は狭いものの、エクリプス クロスにはリアシートを前後に調整できるシートスライド機構が備わっていて、シートを最も前方へスライドさせると、後席に人が座れる状態をキープしたまま、ヴェゼルより広い荷室を得られる。こうしたライバルを上回る実用性は、エクリプス クロスの大きな武器といえるだろう。

エクリプス クロスのふたつ目の美点は、高機能な4WDシステム。確かに、CX-3の4WDは雪道で抜群の安定性を発揮してくれるし、後輪左右の駆動力配分を積極的に調整するジュークのメカは、舗装路で良好なハンドリングフィールを実現している。

しかし、「オート」、「スノー」、オフロード用の「グラベル」という3つの走行モードを任意に選べるエクリプス クロスの4WDは、ライバル以上に幅広い路面で力を発揮する、凝ったシステムといえる。

舗装路においては、積極的に曲がっていくというシャープなハンドリングを楽しませてくれる一方、オフロードでグラベルモードへと切り替えると、優れたトラクション性能を実現。

SUVの中には、悪路を走ると「ないよりはマシ」といった程度の走破力しか持ち合わせていないクルマもある中、エクリプス クロスは悪路でも走破力が高く、ドライブしていて心強い。

■新しいディーゼルエンジンでグイグイ加速する

そして、エクリプス クロスの3つ目の魅力として挙げておきたいのが、先頃追加されたディーゼル仕様のパワフルな走り。従来、エクリプス クロスに用意されていたのは、1.5リッターのガソリンターボだけだったが、去る2019年6月から、2.2リッターのディーゼルターボエンジンも選べるようになった。

ガソリン車は、最高出力150馬力、最大トルク24.5kgf-mであるのに対し、新しいディーゼル仕様は、それぞれ145馬力、38.7kgf-mを発生。ガソリン車と比べると、最高出力こそ5馬力劣るが、最大トルクが約1.6倍にアップしていることは注目に値する。トルクはいわば、エンジンの瞬発力のようなものなので、とにかく走っていて力強い。

実はこのディーゼルエンジン、先行して搭載された「デリカD:5」と同じもので、車重2トン弱という重量級のデリカD:5をも苦もなく走らせる実力派。それを、約250kg軽いエクリプス クロスに搭載したのだから、元気のいい走りを楽しめるのはいうまえもない。ガソリン車も十分なトルクを発揮し、しっかり加速するのだが、ディーゼル車はさらに、グイグイと力強い加速を見せる。

ライバルのCX-3もディーゼルエンジンを搭載するが、その排気量は1.8リッターと小さ目で、スペックも116馬力、27.5kgf-mに留まる。その分、余裕の走りを得られるとまではいいがたく、燃費や経済性を重視した味つけ。それに比べると、400ccのゆとりがあるエクリプス クロスのディーゼルエンジンは、明らかにパワフルだ。

「そんなに力強くても持て余すのではないか?」と思う人がいるかもしれないが、実はそれが、走りの余裕につながっている。アクセルペダルをあまり踏み込まなくてもしっかり加速するから、発進や加速を繰り返す市街地走行での運転がラクだし、リアシートまで人を乗せたり、荷物をたくさん積んで山道の上り坂に差し掛かったりしても、「力が足りずアクセルペダルを大きく踏み込まなければならない」なんて状況になりにくいのだ。

ちなみに、エクリプス クロスに積まれるディーゼルエンジンには、尿素水溶液を使用することで排出ガスをクリーン化するSCR触媒を採用。もちろん、排気ガス中の粒子状物質をキャッチするディーゼルパティキュレートフィルターも搭載するなど、環境性能にも十分配慮されている。

■見逃せない8速ATの自然なフィール

エクリプス クロスのディーゼル仕様でもうひとつ注目したいのは、トランスミッションの変更。ガソリン車はCVTとの組み合わせとなるは、ディーゼル仕様はこのクラスでは珍しい、8速ATと組みあわせている。

CVTは燃費がいいものの、アクセルペダルを踏み込んだ量に対する車速の伸びにダイレクト感が乏しく、違和感を覚えることがある。その点ATは、アクセルペダルを踏む量と車速の上昇とがしっかりリンクするから、加速フィールが自然。さらに、エクリプス クロスのディーゼル車に搭載されるそれは、ギヤの段数が多い8速仕様だから、走行状況に応じたギヤをしっかり選んでくれる点も魅力だ。パワートレーンのドライバビリティに関して、エクリプス クロスのディーゼル車はライバルに対し、明確なアドバンテージを得ており、それだけでこのモデルを選びたくなるほど。

三菱自動車のディーゼルエンジンといえば、かつては「ガラガラ」というディーゼル特有のノイズがかなり耳障りに感じたが、エクリプス クロスのそれはイマドキの水準に抑えられ、かなり静かになった。走行中は気にならないレベルまで抑えられていたことを、併せて報告しておこう。

ちなみにディーゼル仕様は、ガソリン車に比べると30万円ほど高価だが、エコカー減税による購入時の免税措置や、購入翌年の自動車税の減税などで、実質的な価格差は15万円程度まで縮まる。ディーゼル車はガソリン車より燃費が良く燃料の単価も安いから、ランニングコストまで含めれば価格差はさらに縮まるし、もし年間の走行距離が長い人なら、トータル費用はガソリン仕様より安く収まることもあるだろう。

SUV選びに迷っているという人は、実用的で4WDが高機能、さらにパワフルな走りも味わえるエクリプス クロスのディーゼル車を、一度経験することをおすすめしたい。

<SPECIFICATIONS>
☆ブラックエディション(クリーンディーゼル車)
ボディサイズ:L4405×W1805×H1685mm
車重:1680kg
駆動方式:4WD
エンジン:2267cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:8AT
最高出力:145馬力/3500回転
最大トルク:38.7kgf-m/2000回転
価格:342万4680円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部、三菱自動車工業)


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