大ヒットN-BOXに強敵出現!?使い勝手を磨いたダイハツ「タント」は走りもスゴいぞ

■タントは新しい市場を切り拓いたパイオニア

今、日本で売れている乗用車のうち、軽自動車はどのくらいの割合を占めているか、ご存じだろうか?

答えは約4割。そんな売れ線の軽自動車の中でも特に人気なのが、“スーパーハイトワゴン”と呼ばれるジャンルだ。日本で最も売れている乗用車=ホンダ「N-BOX(エヌ・ボックス)」を筆頭に、スズキ「スペーシア」や日産「デイズ ルークス」、そして三菱「eKスペース」などがしのぎを削る激戦区となっている。

そんな同ジャンルの市場を切り開いたのが、ダイハツのタント。2003年に登場した初代モデルは、当時、ダイハツ「ムーヴ」やスズキ「ワゴンR」といった“ハイトワゴン”と呼ばれるモデルが販売の主流を占める中、さらに背の高いパッケージングを持つ新発想モデルとしてデビューし、大ヒットを記録。触発された他メーカーも同様の車種を続々とリリースし、今ではスーパーハイトワゴンが軽自動車のメインストリームとなった。

そんなスーパーハイトワゴンの人気の秘密は、室内の広さと乗り降りのしやすさにある。

室内の広さは、天井の高さはもちろんのこと、リアシートの取り付け位置にも起因する。スーパーハイトワゴンは背の高さを生かし、リアシートを高い位置に取り付けられるのだ。その結果、リアタイヤの張り出しによる影響を受けにくく、後席をより後方にレイアウトすることが可能に。その分、前後シートの間隔を広げることができるから、後席の足下スペースを驚くほど広くとれるのである。

一方、乗り降りしやすい理由は、ふたつ挙げられる。ひとつは、天井が高いおかげでドア開口部の天地高をたっぷり確保できること。ふたつ目は、駐車場などの狭い場所でも全開にできる、スライドドアを採用していることだ。

■広く使い室内にさらなるアイデアを投入

歴史を振り返ってみると、タントというモデルは、かなりチャレンジングなクルマだ。

初代は、それまで前例のない“攻め”の商品企画で、“とても背の高い軽ワゴン”というパッケージングを初めて商品化した。初代の開発スタッフは、それが市場に受け入れられる否か、ドキドキしていたことだろう。

新たにスライドドアを採用した2代目は、助手席側の前後ドアを同時に開けた際、フロントドアとリアドア間にピラーのない“センターピラーレス構造”を採用。ボディサイドの大開口はインパクト絶大で、今でもライバルにはない独自の魅力となっている。

続く3代目は、助手席を前方へロングスライドできる機構を組み合わせることで、後席への“通路”を拡大。センターピラーレスのメリットをより生かせるよう進化した。

そして新しい4代目は、運転席が後方へ540mmスライドするという、これまた常識にとらわれない斬新な機能を採用している。

スライドドアと運転席ロングスライド機構とを組み合わせた新型タントのメリットは、例えば、赤ちゃんや幼い子どもと同乗する場合などに生きてくる。

この場合、乗車時にはまず、子どもを後席に付けたチャイルドシートに座らせる。その後、普通のクルマでは、一度、車外に出て運転席側に回る必要があるが、運転席を後方へ大きくスライドさせることができる新型タントなら、車高の高さを生かし、車内を通り抜けて運転席へと移ることができるのだ。これは、降車時も同様で、狭い場所や雨の日などは、特にそのメリットを享受できるはずだ。

■軽自動車初の機能でライバルに差をつける

新型タントの乗降性へのこだわりは、それだけにととまらない。

例えば、助手席側のフロントドアと電動スライドドアには、“イージークローザー”と呼ばれる半ドア防止機能を用意。これは、半ドア状態まで閉じれば、あとはモーターが引き込んで完全に閉めてくれる機構で、ドアを強く引く必要がない分、子どもやお年寄りでもラクに閉められる。

また、電動スライドドアには、閉まる途中に助手席ドアのボタンにタッチすると、完全に閉まった後にドアロックされる“自動ロック予約”機能も搭載。さらに、降車時にあらかじめインパネのスイッチを押して“予約”しておけば、乗車時にキーを持ってクルマに近づくだけで、自動でスライドドアが開く“ウェルカムオープン機構”も採用する。こうした機能は、小さな子どもを抱っこしたまま乗り降りするシーンなどで、重宝することだろう。

助手席側スライドドアのイージークローザー以外は、いずれも軽自動車としては初採用の機構。新型タントは乗降性において、改めてライバルに差をつけた。

■安全支援システムもイマドキの内容へ進化

イマドキのクルマであれば、先進安全支援システムの充実は欠かせない。中でも、新型タントの先進安全支援システムは、軽自動車としては結構、頑張っている。

例えば、被害軽減ブレーキアシスト機能付きの自動ブレーキは、対象物との速度差が80km/hまで対応。周囲を把握するシステムの“目”にステレオカメラを使うことで、車両だけでなく人にも反応する。

また、一部グレードには、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を設定。高速道路などでドライバーがアクセルやブレーキを操作しなくても、前走車に合わせて設定上限速度内でスピードを自動調整してくれるから、ロングドライブがよりラクになる。

その上、新型タントのそれは、渋滞時にも対応。前走車が止まれば、それに合わせて停止してくれる(その後の停止保持はドライバーが行う)し、また、ACCを使って約60km/h以上で走行する際は、車線の中央部を走るよう、ハンドル操作もアシストしてくれる。

その他の機能としては、“パーキングアシスト”の使いやすさも注目に値する。これは、駐車時のハンドル操作をクルマが自動で行ってくれるものだが、簡単操作で駐車スペースを指定できるようになり、従来の同様のシステムより、より気軽に扱える。これなら日常的に使う気になれるし、起動スイッチがハンドルに組み込まれていて押しやすいのも、いいアイデアだと思う。

■デザインと走りはより大人っぽく

そんな新型タントのスタイリングは、ガラリと大人っぽいものになった。新型も従来と同様、ノーマル仕様と“カスタム”仕様が存在するが、特に後者は、メッキパーツの使用スペースが減った分、顔つきに先代モデルのような派手さがなくなり、精悍さが増した印象だ。スポーティな雰囲気も高まり、ヤンチャな雰囲気がすっかり抜けている。

大人っぽくなったのは、ドライブフィールも同様だ。従来モデルと比べ、ハンドルを切った分だけ、クルマが自然に向きを変えるようになり、背の高さに起因するコーナリング時の不安定なフィーリングも一掃され、安定感が高まった。

それらは、十数年ぶりに基本設計を一新したサスペンションや、車体の低重心化、FF車のリアスタビライザー標準化などの賜物といえる。峠道のコーナーや交差点を曲がる際も、車体がグラッと傾くことがなくなり、旋回中もハンドルの修正操作が少なくなるなど、背の高さを感じさせないほどに、クルマの動きが素直になった。

もちろん、段差を乗り越える際や荒れた路面を走る際の乗り心地には、まだまだ進化の余地があると感じたが、新型の走行フィールは、従来モデルと比べて目を見張る進化を遂げている。

さらに新型タントは、新しいCVTの採用などで加速性能がアップしており、パワーが不足気味の自然吸気エンジン車でも、かなり乗りやすくなった。とはいえ、背が高い分、軽自動車としては車体が重め。そのため、軽快な走りを求める向きには、幹線道路や高速道路への合流加速が断然力強い、ターボ仕様の方がお勧めだ。

<SPECIFICATIONS>
☆カスタムRS(2WD)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1755mm
車重:920kg
駆動方式:FF
エンジン:658cc 直列3気筒DOHC ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:64馬力/6400回転
最大トルク:10.2kgf-m/3600回転
価格:178万2000円

<SPECIFICATIONS>
☆X(2WD)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1755mm
車重:900kg
駆動方式:FF
エンジン:658cc 直列3気筒DOHC
トランスミッション:CVT
最高出力:52馬力/6900回転
最大トルク:6.1kgf-m/3600回転
価格:149万500円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)


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