エコなのは当たり前!「3008ハイブリッド4」はプジョー最強の走りにも驚きます

■最大の驚きは胸のすくようなドライブフィール

こんなにハンドリングが良くて、峠道を楽しく走れるなんて! プジョーの3008に追加されたプラグインハイブリッド仕様「3008ハイブリッド4」の最大の驚きは、胸のすくような走りだった。

改めておさらいすると、プラグインハイブリッドカーは大容量のバッテリーを搭載し、外部からの充電を可能にしたハイブリッドカーの進化型と考えれば分かりやすい。一般的なハイブリッドカーと同様、燃料を入れれば長い距離を走り続けることができ、その一方、あらかじめバッテリーに充電しておけば、近距離ならエンジンを止め、EV(電気自動車)のようにモーターだけでも走れる。まさに、ハイブリッドカーとEVを“いいとこ取り”したのがプラグインハイブリッドカーなのである。

そんなプラグインハイブリッドカーは、たくさんの魅力を備えている。燃費がいいのはもちろん、静粛性が高く快適で、近所を走るだけならエンジンが稼働しないのでガソリンスタンドに行く機会も減る。そして何より、モーター駆動による爽快な走りが気持ちいい。

今回採り上げる3008ハイブリッド4も、もちろんそうした特徴を備えているが、それはプラグインハイブリッドカーとしては当たり前のこと。その上でこのモデルは、心地良いハンドリングをも身に着けていたのである。

■リアモーターは135km/hまで後輪を駆動可能

先頃マイナーチェンジを実施した3008は、プジョーのミッドサイズSUVだ。ボディサイズは全長4450mm、全幅1840mm、全高1630mmだから、マツダの「CX-5」とほぼ同じ。そこに、1.6リッターのガソリンターボ(180馬力)と2リッターのディーゼルターボ(177馬力)、そして新たに加わった、1.6リッターガソリンターボにモーターをプラスしたプラグインハイブリッドという3タイプのパワートレーンを設定している。

プラグインハイブリッド仕様である3008ハイブリッド4は、3008シリーズで唯一、4WDの駆動方式を採るが、前後を機械的につなぐプロペラシャフトは存在せず、前輪をエンジン+モーター、後輪をモーターのみで駆動する。いわゆる“電気式4WD”と呼ばれる方式で、3008ハイブリッド4は135km/hまでリアタイヤを駆動する能力を備えている。

また3008ハイブリッド4は、ハイブリッドシステムを搭載すべく車体後部の多くに専用設計が施された。例えばリアサスペンションは、ガソリン車やディーゼル車がトーションビーム式なのに対し、マルチリンク式を組み合わせるなど、その変更はかなり大がかりだ。

ちなみに、3008ハイブリッド4に搭載されるバッテリーはリチウムイオンタイプで、総電力量は13.2kWh。この数値は、マツダ「MX-30」のEV仕様や「ホンダe」(35.5kWh)の35%強であり、満充電しておけばエンジンを掛けず、バッテリー内の電力だけで64km(カタログ記載のWLTCモード)も走れる。エンジンを組み合わせるプラグインハイブリッドカーとすれば、十分な容量といっていいだろう。

なお充電は、普通充電のみの対応となり、出力6kWの200V充電器なら約2時間半で完了する。

3kWタイプの場合は5時間ほど掛かるが、自宅に充電環境が整っている人なら、帰宅後にコンセントを挿しておくと翌朝には充電が完了しているため、利便性は悪くない。

■重量配分の良化と4WD化で実現した極上のハンドリング

今回、そんな3008ハイブリッド4で峠道をドライブする機会を得たのだが、あまりにもよく曲がることに驚いた。曲がり始める際、クルマがクッと素直に向きを変えるのだ。その上で感動的なのは、回り込んだ深いコーナーを曲がる時。クルマが外側へ張り出していくような素振りを見せず、まるでクルマ自身が曲がりたがっているかのようにグングン向きを変えていく。

このように、3008ハイブリッド4のハンドリングが素晴らしい理由として、ふたつの要因が考えられる。

ひとつは、大型バッテリーやリアモーターの搭載など、プラグインハイブリッド化によって車体後部の重量が増し、前後の重量バランスが理想に近づいたこと。しばしば「ハンドリングには50:50の前後重量配分が理想的」とか、「ミッドシップ車は前後重量配分が45:55だから機敏に走る」といったフレーズを耳にするが、相対的にクルマのフロント側が軽いほど、ハンドリングが良くなるというのは物理の法則からしても明らかだ。3008ハイブリッド4はガソリン車より350kgほど重いものの、重量バランスは逆に良化しているのである。

ふたつ目の要因として考えられるのは駆動方式だ。3008はガソリン車、ディーゼル車ともに前輪駆動を採用するのに対し、プラグインハイブリッド仕様は4WDとなる。しかも、後輪用モーターがしっかり駆動力を発生するため、コーナーを曲がり込む際、まるで後輪駆動車のように後ろのタイヤで大地を蹴る感覚がある。アクセルペダルを踏みながらの旋回時には、それが操縦特性に効いているのだろう。

加えて3008ハイブリッド4は、動力性能においてもガソリン車やディーゼル車を凌駕する。エンジン単体の最高出力は、ガソリン車プラス20馬力の200馬力で、そこにフロント側110馬力、リア側112馬力と力強いモーターをプラス。システム全体のトータル出力でも300馬力を発生するという、かなりのチカラ自慢だ。3008ハイブリッド4はプラグインハイブリッドカーだからといって燃費がいいだけでなく、速さにおいても十分以上の“高性能仕様”なのである。

最後に、プラグインハイブリッド化によって、荷室や室内の使い勝手がどのように変化しているかについても見ておこう。ひと言でいえば、そうした点においても3008ハイブリッド4はよくできている。バッテリーを座面下に積む影響からリアシートの構造こそ異なっているが、前後シートを始めとするキャビンの居住性に関しては、ガソリン/ディーゼル車と比べてほぼ変化は感じない。

また、荷室のフロアから上の部分に関しては、容量など一切変更なし。確かに、荷室フロア下にある収納スペースの容量は減っているし、後席の背もたれを倒した際、荷室フロアはフラットにならないが、日常的な使い勝手に関してはほとんど犠牲になってはいないのだ。

今後、自動車マーケットでは、プラグインハイブリッドカーがますます増えていくはずだ。それらは一般的に、エコ性能の高さにフォーカスが当たりがちだが、中には3008ハイブリッド4のように、走りを楽しめるモデルも存在する。これはクルマ好きにとって朗報といえるだろう。そして今後、プラグインハイブリッドカー選びにおいては、走りの楽しさや走行フィールなども重要な決め手となりそうだ。

<SPECIFICATIONS>
☆3008 GT ハイブリッド4
ボディサイズ:L4450×W1840×H1630mm
車重:1850kg
駆動方式:4WD
エンジン:1598cc 直列4気筒 DOHC ターボ+モーター
エンジン最高出力:200馬力/6000回転
エンジン最大トルク:30.6kgf-m/3000回転
フロントモーター最高出力:110馬力/2500回転
フロントモーター最大トルク:32.6kgf-m/500〜2500回転
リアモーター最高出力:112馬力/1万4000回転
リアモーター最大トルク:16.9kg-m/0〜4760回転
価格:565万円

>>プジョー「3008」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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