この手のクルマにとって、とても大切だと思うことがふたつあります。
ひとつは、あくまでもフツーであること。ゴルフRヴァリアント、いい感じにフツーです。ちょっと買い物へ行く、ちょっと駅まで家族を送って行く。そんな時に気後れさせません。どんなにホットであっても、フルバケットシートに腰掛けるような気構えをさせてはならないのです。
その点、このゴルフRヴァリアントは、ハイパワーをひけらかすようなことはありません。ユーティリティはもちろん、乗り心地さえ、素のゴルフとして日常使いできます。これ、とても大切なポイントだと思うのです。
もうひとつは、豹変することなくハイパワーを引き出せること。スイッチが入った途端、別モノになってしまうのではなく、ドライバーが求めた瞬間、惜しげもなくパワーを与えてくれるのです。
エンジンのダウンサイジングとターボ化を先行したフォルクスワーゲンにしてみれば、2リッターもあればもう大排気量の雰囲気。たとえば、高速道路で走行車線から流れの速い追い越し車線へ移るシーン。ブ厚いトルクで涼しく加速し、何事もなかったかのようにクルマとクルマの間へ美しくレーンチェンジ。モタモタして後続車にブレーキを踏ませたりすることはありません。いつでもスマートにパワーを使いこなせます。
そんな、スポーツワゴンのお手本みたいなゴルフRヴァリアントですが、実は豹変するモードも備わっています。それが、アダプティブシャシーコントロール“DCC”です。
センターコンソールのスイッチでR専用に設定された「レース」を選択すると、シフトダウンとともにエンジンの回転数が「ヴンッ」と跳ね上がり、ダンパーの減衰量が締め上げられることでステアリングフィールもタイトになります。そしてアクセルオンで、まるで獣が吠えるかのような咆哮が！ レーシーなエキゾーストサウンドを聞かせ、ドライバーの意図へもっともっとシャープに反応するようになるのです。このモードにおいては、チンタラ走るのは罪。エンジンの咆哮に求められるがままアクセルを踏むと、もはやステーションワゴンであるという認識が、風切り音とともに飛び去っていきます。
いやー、実に痛快です、ゴルフRヴァリアント。
スポーツカーとステーションワゴン、双方を1台にまとめられるという高い合理性はもちろん、日常と非日常を大きな振幅で行ったり来たりできる、超厚切りで贅沢な仕上げに惚れました！
＜SPECIFICATIONS＞
☆Rヴァリアント
ボディサイズ：L4595×W1800×H1465mm
車重：1560kg
駆動方式：フルタイム4WD
エンジン：1984cc直4ターボ
トランスミッション：6速DSG
最高出力：280馬力／5100-6500回転
最大トルク：38.7kg-m／1800-5100回転
価格：559万円
(文＆写真／ブンタ）
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