◾️『あやとり』が編み出す、素材とスパイスの糸
▲こちらでは料理に合わせた、ワイングラスが似合うお酒が揃う
左側の『あやとり』のカウンターに立つのは綾さん。
元々フランス料理をやりたくて、そこから料理をスタートしたそうですが、就職した先が日本料理ベースの創作料理で、日本料理のその理論の方が得意になったそう。そこからシンガポール料理店で店長を務めたほか、キッチンカーや出張料理など、型に嵌まらないスタイルで料理を届けてきました。
「あやとりという店名は、私の名前の一文字でもあるし、糸を掛け合わせるように食体験をいろんな形に表現したいという想いから付けました」と綾さんは微笑みます。
▲カウンターの裏側のキッチンスペースで調理する綾さん
彼女の料理は、まさに自由な「掛け合わせ」だ。例えば和食の出汁をベースにしながらも、フレンチのソースの技法を使い、そこにシンガポールやベトナムのスパイスを忍ばせたりする。
「例えば、料理や素材に合わせてお浸しにしたり、ジェノベーゼを合わせたり、もつ煮込みをベトナム風に仕立てたり。素材そのものを活かすフレンチと日本料理の共通点に、スパイスという面白さを加えたいんです」
▲「いちごとうるい 伽羅蕗の白和え」一人分600円。フルーティさを感じる純米吟醸原酒「亀泉」の生酒と一緒に
▲ランチメニューの一つ「半熟煮卵ラクサ」1,300円。海老のペーストとスパイス、ココナッツミルクベースのスープに、「邦栄堂製麺」(鎌倉)の麺を使用
綾さんが生み出す多国籍で情緒豊かな一皿には、昂士さんがセレクトした少し寝かせた古酒や、酸味のある日本酒、サワーや焼酎などがそっと寄り添います。『なおらい』と一線を引いた、綾さんの世界観を感じ取ってみてください。
◾️昼と夜の境も営業。どんな人でも受け入れる

鎌倉のこの界隈は、飲食店が閉まる時間が意外と早い。「わざわざ足を運んだのに、店が空いていなくてショックを受けている人をたくさん見てきました。そんな迷子になった人たちも救えるお店です(笑)」(昂士さん)
だからこそ二人は、多くの店が準備中となる午後3時から6時の間も、暖簾を出し続ける。昼食からそのまま飲み続けたい人も、夜の予約までの一杯を楽しみたい人も、ここでは皆平等に迎え入れてくれます。
「あっちが満席なら、こっちで一杯やりながら待つ。そんな自由なはしご酒を楽しんでほしい」と二人は口を揃えます。
会計の方法も、お酒のラインナップも、料理のジャンルも全く違う二つの店。けれど、壁一枚隔てて繋がるその空間には、夫婦がそれぞれに信じる「食の楽しさ」が、あやとりの糸のように複雑に、そして美しく絡み合っています。
鎌倉の夕暮れ、『角打なおらい』で喉を潤し、『あやとり』で心を解く。そんな至福のループに、今日も誰かが迷い込んでくることでしょう。

角打なおらい/ あやとり
住所:神奈川県鎌倉市大町1丁目4-18
営業時間:角打なおらい/11:30〜22:00、あやとり/11:30〜15:00(L.O.14:30) 18:00〜22:00(L.O.21:30)
定休日:火曜・水曜
>>角打なおらいInstagram
>>あやとりInstagram
<取材・文/草地麻巳 写真/猪俣博史>






























