24-600mmでポートレート撮影。ソニー「RX10 V」は広角側こそ面白かった

■標準〜望遠域は撮りやすいが、ボケの扱いが難しい

▲RX10 V 1/1000、F4.0、ISO100、55mm(35mm換算)

50〜100mm付近は人物の形が自然に見え、背景も整理しやすく、モデルとの距離も遠すぎないため、一般的なポートレートとしては撮りやすい焦点距離です。

ただ、RX10 Vの場合は、フルサイズカメラに明るい単焦点レンズを付けたときのように背景が大きくぼけるわけではないので、人物を主題として撮影するには少し難しさを感じました。

▲RX10 V 1/1000、F3.5、ISO1000、85mm(35mm換算)

85mm付近では開放F値がF3.5となり、モデルと背景の距離などを意識すれば、もちろん背景をぼかすことはできます。とはいえ大口径レンズのようなとろけるボケとはいかず、背景によってはやや騒がしく感じることもありました。

▲RX10 V 1/1000、F4.0、ISO1250、246mm(35mm換算)

1.0型センサーでも、モデルと背景の距離を確保すれば、ボケを大きくできます。標準域よりも人物を背景から分離しやすく、王道ポートレートらしい画を作れました。

▲RX10 V 1/1000、F4.0、ISO320、55mm(35mm換算)

ただ、RX10 Vで1日ポートレート撮影をしてみて感じたのは、センサーの小ささに起因する被写界深度の深さを活かして、標準〜広角域寄りの焦点距離で、周囲の環境まで含めた人物撮影なのではないかということです。

▲RX10 V 1/1000、F4.0、ISO100、24mm(35mm換算)

この日に撮影した写真を見返してみると、一緒に歩いたときの会話まで思い出せそうな気がしてきます。お互いが歩きながら見つけたものを教え合ったり、自然な距離感でその日の思い出を残せていたように感じました。

 

■高速なストロボ同調で日中の光をコントロールする

ポートレート撮影で使ってみて気づいたRX10 Vの利点が、高速なストロボ同調速度です。

一般的なフルサイズミラーレスカメラの場合、通常発光でストロボを同調できるシャッタースピードは1/200〜1/250秒程度です。それ以上にシャッタースピードを上げる場合はハイスピードシンクロを使用しますが、ストロボの光量が大きく低下します。

▲RX10 V 1/1000、F5.6、ISO100、44mm(35mm換算)

RX10 Vは、条件によって最高1/2000秒まで通常発光のままストロボを同調できます。今回の撮影では小型のクリップオンストロボを使用し、明るい青空を残しながら人物へ光を加えてみました。大光量のストロボやハイスピードシンクロを使わなくても、日中シンクロ撮影ができるのはメリットです。

なお、メカシャッターの最高速度はF2.4〜F7.1では1/1000秒、F8以上では1/2000秒となります。それでも一般的なカメラより高速なシャッタースピードで通常発光を利用できるため、小型のストロボでも表現の幅を広げられます。

背景を大きくぼかすのではなく、空や風景をしっかり写しながら光をコントロールする。高速なストロボ同調も、RX10 Vに向いているポートレートの方向性と相性が良いと思いました。

 

■ボケに頼らないスナップ的なポートレートが面白い

▲RX10 V 1/1000、F4.0、ISO100、36mm(35mm換算)

RX10 Vでのポートレート撮影で最も相性が良いと感じたのは、24〜35mm付近で周囲の風景を取り入れた、スナップ的な撮り方でした。

▲RX10 V 1/1000、F4.0、ISO100、34mm(35mm換算)

撮影者とモデルの距離が近いため、コミュニケーションを取りやすく、一緒に歩きながらその場で見つけたものを写真に取り入れられます。大きなボケを作りにくい1.0型センサーも、周囲の風景まで含めた撮り方では弱点になりません。

標準域では素直な人物写真を撮れるものの、ボケが中途半端になりやすく、フルサイズカメラとの差も感じました。望遠側では圧縮効果や大きなボケを作れますが、モデルとの距離が離れるため、撮影のテンポやコミュニケーションは変わります。

RX10 Vは、明るい単焦点レンズの代わりになるポートレートカメラではありません。背景を大きくぼかすことを最優先するなら、フルサイズカメラと明るいレンズを選ぶほうが良いかもしれません。

それよりも、広角側で場所と人物を一緒に写し、必要に応じて一瞬で望遠へ切り替える。友人と街を歩くような距離感で、風景と人物の両方を残す。そう考えると、24-600mmという広大なズーム域と1.0型センサーを搭載したRX10 Vならではの、ポートレートの楽しみ方が見えてきました。

>> ソニー「RX10 V」

>> 趣味カメラの世界

<取材・文・写真/田中利幸 モデル/朱里(@punta_ma96)>

 

【関連記事】

◆まず持ちたくなる。「LUMIX L10」は“趣味カメラ”としてかなり正しい
◆手のひらにフルサイズを。ソニー「RX1R III」で感じた“軽さは正義”という真理
◆“1億200万画素”で切り取る。富士フイルム「GFX100RF」が引き出す東京の新たな表情とは

トップページヘ

この記事のタイトルとURLをコピーする