【ベンツ Cクラス海外試乗】6500箇所を刷新!“EQブースト”の上質な走りが新鮮:河口まなぶの眼

■ボディやサスペンションはマイチェン前のそれを踏襲

新しいCクラスは、マイナーチェンジであるにもかかわらず、実に6500点にも及ぶ改良が施された。

マイナーチェンジは“フェイスリフト”とも呼ばれるように、新型Cクラスでも内外装がブラッシュアップされている。エクステリアでは、まず前後バンパーが新デザインとなったほか、新たなLEDハイパフォーマンスヘッドライトを標準装備している。さらにオプションで、マルチビームLEDヘッドライト(ウルトラハイビーム付き)を用意。こちらは、よりアクティブな配光による安全性向上を期待できる。こうしたライト類の変更で、新型の顔つきは印象が一変。特に、LEDハイパフォーマンスヘッドライト付きのモデルは、複眼を持つ昆虫のような目つきが印象的だ。

インテリアでは、まずオプションでフル液晶のデジタルコクピットを選べるようになったのがポイント。これを選ぶと、目の前のメーター内に、12.3インチの高精細な液晶メーターが組み込まれ、先進的なイメージがアップする。

また、ダッシュボード中央に備わるタブレットのようなモニターは、以前よりも横長のタイプを新採用。さらに、最上級モデル「Sクラス」と同じ機能を備えた新デザインのステアリングが採用され、ここにはタッチコントロールも備えられている。そのほか、スマホを置くだけで充電できる機能をセンターコンソールに備えたり、USBポートがさらに増えたりと、きめ細やかな“イマドキ装備”が豊富に与えられた。

そして、今回のフェイスリフトにおける目玉といえば、新パワーユニットの採用。中でも注目は、日本仕様では「C200アバンギャルド」のエンジンで、従来の2リッター直4直噴ターボに代わり、なんと、1.5リッターの直4直噴ターボに切り替わったのである。

2リッターから1.5リッターへ…そう記すと、単なる排気量のダウンサイジングに思えるが、実情は少々異なる。C200アバンギャルドでは、この1.5リッター直4直噴ターボに、独自のBSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)や48ボルト電気システムを組み合わせ、“EQブースト”仕様としているのがトピックなのだ。

EQブーストは、すでに日本仕様のS450において、直6+ISG(インレグレーテッド・スターター・ジェネレーター)搭載モデルが展開されている。今回、C200アバンギャルドに与えられたEQブーストは、それをよりシンプルな仕組みにしたものと考えればいい。

C200アバンギャルドに搭載されるEQブーストは、最高出力184馬力、最大トルク28.6kgf・mという、従来のC200に搭載されていた2リッター直4ターボとほぼ同等のスペックを持つ1.5リッター直4直噴ターボを軸とする。そこに、ベルト駆動の最高出力14馬力/最大トルク16.3kgf・mを発生するスターター/ジェネレーターを組み合わせ、これを加速時や変速時のアシストおよび回生用モーターとして利用する。つまりEQブーストは、いわゆるマイルドハイブリッド機構なのだ。

乗ってみて印象的だったのは、まずはエンジン始動時の反応。なぜなら、EQブーストはスターター/ジェネレーターで始動するため、従来型エンジンのようなセルスターターがなく、始動時につきもののセルの音や振動がないのである。そして、停止状態から発進する際は、通常のエンジンよりレスポンス良く、素早く加速が始まる。その理由は、10kW/16.3kgf・mのモーターアシストが働くため。つまり、電気自動車やハイブリッドカーのように動き出す、独特のフィーリングを伴うのだ。

さらに、シフトアップ/ダウンの際、ともにシフトショックが皆無なのも新鮮だ。従来型エンジンの場合、シフトアップ時はエンジンの回転が落ち込むが、EQブーストでは回転落ちをモーターがアシストするため、変速ショックがなく滑らかに加速する。一方、シフトダウン時も、従来型エンジンではエンジン回転が跳ね上がるが、ここでもEQブーストはモーターを抵抗として使う制御によって回転の上昇を抑えるため、滑らかにシフトがつながるのである。

また、エコモードで高速道路などを走行する場合に、アクセルペダルから足を離すと、エンジンが停止して空走することで燃費を稼ぐ“コースティング”という機能があるが、EQブーストではその状態から再びアクセルを踏み込んでエンジンが再始動する場合にも、ショックがないのだ。これも、モーターがアシストしてからエンジンがかかるためである。

こんな具合なので、エンジン全体の印象はむしろ、以前の2リッター仕様よりも上質に感じるほど。同時にメルセデス・ベンツは、EQブーストという“電化”によって、これまでのエンジンを将来に適合させつつ、商品として魅力あるものにし、さらに、この先もしっかりと持続可能なものにしてきたわけだ。

このほか新しいCクラスでは、すでに「Eクラス」に搭載されている、2リッターの新世代クリーンディーゼルエンジンが搭載されたのもトピックだ。パワーは以前の170馬力から194馬力へと高出力化しつつ燃費を向上させ、同時に、以前よりも軽快な回転フィールを身につけるなど、より魅力が増している。

しかしながら、新型Cクラスで驚いたのは、ボディやサスペンションについては、フェイスリフト前のそれを踏襲しているということだ。つまり、エンジン以外の走りに関する部分については、ほぼ変更がないのである。

事実、サスペンションに関しては、一部グレードにオプションで無段階可変の“ダイナミック・ボディ・コントロール”が与えられたのみ。それだけに、基本は変わっていないといえる。にも関わらず、走らせて驚いたのは、改めてその乗り味、走り味が「素晴らしい!」と評価できたこと。そう考えると、現行Cクラスというクルマの素性の良さと完成度の高さを、改めて思い知らされる。

実は、ジュネーブ国際モーターショー2018で開発責任者に「足回りには変更がない」と聞いた時は「大丈夫かな?」と少し心配していた。しかしながら、フェイスリフトを受けたCクラスの乗り心地とハンドリングの高次元なバランスは、いまだにクラストップと評価しても良い出来栄え。加えて、最新のライバルと比べてもひけをとらないどころか、むしろ、このクラスの頂点といってもいい走りを備えていたのだった。

さらに、新型Cクラスでは、安全装備と運転支援がアップグレードされ、EクラスやSクラスとほぼ同等の内容になったことも忘れてはならない。例えば、ウインカーレバーの操作で自動的にレーンチェンジする“アクティブレーンチェンジアシスト”を新採用。さらに“アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック”では、地図とナビゲーションのデータを活用し、カーブやジャンクションで予見的に速度調整を行ってくれる。

そのほか“アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック”におけるステアリングアシストなど、先進運転支援システムも最新機構を採用するEクラスやSクラスのそれと同じ制御ソフトにアップデートされ、一層の進化を果たしている。

まさに、スキなしといえるフェイスリフトを行うことで、Cクラスはこのクラスの頂点の座を守ったといえる。では、間もなくフルモデルチェンジするとされるBMWの「3シリーズ」は、どのようにCクラスとの差を詰めるのか? はたまた、アウディ「A4」はどのように動くのか? ライバル対決も含め、今後もこのクラスからは目が離せない。

<SPECIFICATIONS(欧州参考値)>
☆C200セダン アバンギャルド
ボディサイズ:L4686×W1810×H1442mm
車重:未公表
駆動方式:FR
エンジン:1497cc 直列4気筒 DOHC ターボ + モーター
トランスミッション:9速AT
最高出力:184馬力/5800~6100回転
最大トルク:28.6kgf・m/3000~4000回転
価格:552万円

(文/河口まなぶ 写真/メルセデス・ベンツ日本)


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