【MINIクロスオーバーPHEV試乗】ハイブリッドでもMINIの走りはやっぱり軽快だった!

■PHEVならではの見た目の演出は控えめ

2017年2月に日本上陸を果たした2代目のクロスオーバー。昨今のクロスオーバーSUVブームもあって、MINIシリーズの中でも大きなボリュームを占める人気モデルとなっています。

ボディサイズは先代モデルからひと回り拡大され、大人4名でも十分な居住空間を確保。それでいて、MINIらしいキビキビとした走りも受け継いでいるのですから、同乗者の快適性とクルマ趣味を両立したい人にとって、まさに理想的な1台といえるでしょう。

そんなクロスオーバーに設定されたPHEVは、基本的にベースモデルに準じたスタイルを採用しています。仔細に観察すると、バンパーの形状は「クーパーD」、ハニカム模様のフロントグリルは「クーパーS D」と同じ意匠になるほか、“E”をモチーフとしたバッジがフェンダーやリアゲートに配されています。遊び心もMINIの個性といえるので、PHEVの演出はいささか控え目に感じますが、この手の演出はやり過ぎるとオモチャっぽい印象になってしまいますし、気恥ずかしいという人もいるでしょうから、絶妙なサジ加減だと思います。

■88馬力のモーターで後輪を駆動する4WD

気になるメカニズムを紹介しましょう。エンジンは、ガソリン仕様の1.5リッター直列3気筒ターボで、最高出力は136馬力、最大トルクは22.4kgf-mを発生。6速ATを介してフロントタイヤを駆動します。一方、88馬力を発生する電気モーターは、ラゲッジスペースの下に置かれ、リアタイヤを駆動します。リアシートの下に配置されるリチウムイオン電池の総電力量は7.6kWhで、200V電源を用いて、約3時間でフル充電可能とのこと。ちなみに、充電ソケットは左のフロントフェンダー部に備わります。

BMWに詳しい人ならお気づきかもしれませんが、MINIクロスオーバーPHEVのシステムは、BMWの「225xe iPerformance アクティブツアラー」と基本的に共通で、トータル出力は224馬力、同トルクは39.3kgf-mと、まさに“クーパーS”を名乗るにふさわしいスペックが与えられています。

ちなみに走行モードは3種類から選択可能で、フル加速時以外は電気のみで走行する「マックスeドライブ」、つまりEV(電気自動車)モードでは、最長42.4kmの走行が可能とのこと。都市部でのちょっとしたお買い物や、普段の家族の送り迎えといった使い方であれば、十分な後続距離といえるでしょう。

その他、お任せモードの「オートeドライブ」では、約80km/hまではEVをベースとしますが、高速走行や強力な加速を必要とする時や、バッテリー残量が減った場合などにはエンジンでの走行に切り替わります。また、バッテリーのセーブ・充電を行う「セーブ」モードも設定。つまり、モードや速度、走行状況、バッテリーの充電残量などにより、前輪駆動や後輪駆動、4輪駆動が自動で切り替わるという仕組みです。

なんだか難しそうなシステムに感じますが、オートにしておけばクルマがすべて自動で切り替えてくれますし、よほど敏感な人でも、駆動輪の切り替わりを感じとれることはなさそうです。もちろん、ダッシュボード中央のモニターには、ドライブモードの状況を表示することもできますし、もしエンジンが始動すれば、控え目な音量ながらも排気音やメカニカルなサウンドが聞こえてきます。

■助手席に乗ってもワクワクするMINI独自のインテリア

室内に収まると、目の前に広がるのはお馴染みのMINIワールド。シートポジションや操作系のレイアウトも、基本的にはMINIのクロスオーバーを踏襲しています。

もちろんPHEVだけに、センターディスプレイにはエネルギーの流れや駆動状況が表示されるほか、イルミネーションが異なるといった演出の違い、そして、タコメーターに代わってバッテリーの充電状態を示す“Eメーター”が備わるといった相違はあります。しかし、MINIオーナーの人や、PHEVは初めてという人でも、操作に困るということはなさそう。また、助手席に座っていると、センターディスプレイの表示が多彩なせいか、クルマ好きでなくてもなんだかワクワクさせられます。

■エンジンでもモーターでもキビキビした走りは健在!

短時間、しかも市街地のみという限られたテストドライブでしたが、MINIクロスオーバーPHEVの走りの印象は、ベースとなったMINIクロスオーバーと変わらず。エンジン走行でもモーター走行でも、キビキビとしたMINIらしい走りは健在です。

確かに、ハイブリッド車やPHEVでは避けられないバッテリー分の重量増はありますが、停止した状態からの加速では、評判のディーゼルモデルと同様、力強く軽快で、乗り心地も不自然さを感じることはありませんでした。乗り比べた時に微かに違いを感じるかな、という程度ではありますが、むしろPHEVの方がしっとり重厚な乗り心地なので、家族や友人を乗せる機会が多い人には、好ましいかもしれません。

このところ、勢力を拡大しているEVやPHEVですが、クルマの性質もあり、MINIクロスオーバーPHEVほど遊び心にあふれたモデルは少数派だと思います。確かに、 PHEVのメリットを余すところなく享受しようと思えば、自宅駐車場に給電設備が必要…といった課題もありますが、PHEVとして満足いくクオリティや性能を実現したクルマですから、尻込みは無用です。

MINIのラインナップに加わった新たなる個性。MINIクロスオーバーPHEVは、エコカーの購入を検討中の人はもちろん、MINI好きやMINIシリーズに興味がある人にとって、要チェックの1台だと思います。

<SPECIFICATIONS>
☆クーパーS Eクロスオーバー ALL4
ボディサイズ:L4315×W1820×H1595mm
車重:1770kg
駆動方式:4WD
エンジン:1498cc 直列3気筒 DOHC ターボ+モーター
トランスミッション:6速AT
エンジン最高出力:136馬力/4400回転
エンジン最大トルク:22.4kgf-m/1400~4300回転
モーター最高出力:88馬力/4000回転
モーター最大トルク:16.8kgf-m/3000回転
システムトータル最高出力:224馬力
システムトータルトルク:39.3kgf-m
価格:498万円

(文&写真/村田尚之)


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