【ベンツ Eクラスクーペ試乗】SUV全盛の今、あえて2ドアクーペを選ぶ価値って何?

■新しいメルセデスの流儀に従った優美なエクステリア

試乗した「E400 4マチック クーペスポーツ」(1058万円)は、3リッターV6ツインターボ(333馬力)を搭載したEクラスクーペのトップモデル。日本ではほかに、2リッター直4ターボ(184馬力)を積む「E200クーペ」(700万円)、「同クーペスポーツ」(769万円)、同じエンジンをチューンして245馬力を得た「E300クーペスポーツ」(855万円)もラインナップされます。

E400クーペのボディサイズは、全長4855mm、全幅1860mm、全高1430mm。2ドアボディゆえセダンより短くなった全長に合わせ、ホイールベースもしっかり短縮しています。セダンの「Eクラス」より65mm短い2875mmとしています。

エクステリアデザインは、新世代メルセデスの流儀に従った、曲面を多用した優美なもの。トランク上部の後端をつまんで空力を整えてはいますが、尻下がりのフォルムがエレガントです。このスタイルは、周囲を威圧しなければいけない(!?)プレミアムブランドには「向かない」といわれてきたので、プレミアムブランドの本家本元といえるメルセデスが採用してきたのは驚きです。経営陣の勇気ある判断に“拍手!”ですね。

E400クーペには“AMGスタイリングパッケージ”が標準で装着され、前後バンパーおよびサイドスカートが、下位グレードモデルよりエアロダイナミクスを意識したカタチに変わります。とはいえ、本来の優雅さは全くスポイルされません。足元には、AMGデザインの19インチホイールがおごられます。

■室内の“おもてなし”は侮りがたいレベル!

Eクーペの最上級モデルらしく、内装も豪華。柔らかなナッパレザーが標準仕様となり、フロントシートは“マルチコントロールタイプ”になります。これは、内部にエアチャンバー(空気袋)を仕込んだシートで、各部を乗員に合わせてきめ細かく調整可能。その上、リクラゼーション機能ことマッサージ機能も備え、前席乗員の背中をゴリゴリとほぐしてくれます。いつの間にかドイツ車の“おもてなし”も、侮りがたいレベルに達していたんですね。さらにシートヒーターに加え、夏場にありがたいベンチレーション機能も備わります。

運転席の正面には、21世紀のラグジュアリーカーらしく、12.3インチの大型ディスプレイが横に広がり、各種メーター類を表示します。個人的には、このクールな近未来感と、温かな自然の風合いを演出したマットなウッドパネルとの組み合わせが、現行Eクラスのインテリアにおける、ひとつのハイライトだと思っています。室内を彩るLEDによる間接照明を、64種類の中から選べるのはご愛敬。機能に直接かかわらない、こうした“プラスα”が、オーナーの方にはうれしいものなのでしょう。

■こいつ、見かけによらず速いぞ!

ステアリングホイールを握って走り始めれば、最高出力333馬力、最大トルク48.9kgf-mを発生する強心臓の持ち主ですからね、スロットルペダルを踏みながら、「うひゃあ、こいつ、見かけによらず速いぞ!」なんて心の中ではしゃいでしまう人がいるかもしれません(←ワタシです…)。ただ、3リッターV6ツインターボのこうした絶対性能は“秘してこそ輝く”もので、通常は、余裕ある排気量による自然な力強さがありがたいものです。

試乗車の足まわりは、エアサスペンションが標準となります。ソフトな乗り心地を提供しつつ、コーナリング時など必要に応じてスプリングレートを上げられるフレキシビリティに富む贅沢な機構です。高速走行時には、車高を15mm下げて空気抵抗を減じる機能も備わります。

伝統あるメルセデスのクーペには、なんというか、オーナーの嗜好を知り尽くした安心感がありますね。全体に穏やかで優雅。積極的に先進テクノロジーを採り入れつつ、クラシカルな居心地の良さも忘れない。デザインも走りも突出していないけれど、いざという時には十二分の力で応えてくれる。そんな頼りがいもあります。

今、1000万円級のクルマを選ぶに当たって、あえて2ドアクーペをセレクトする。いかにも“確固とした自分”を確立しているようで、相当カッコいいと思うのですが、どうでしょう? 街で同型車とすれ違う機会が少ないことも、この種のクルマの場合、むしろ加点要素ですよね!

<SPECIFICATION>
☆E400 4マチック クーペスポーツ
ボディサイズ:L4855×W1860×H1430mm
車重:1970kg
駆動方式:FR
エンジン:2996cc V型6気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:9AT
最高出力:333馬力/5250〜6000回転
最大トルク:48.9kgf-m/1600〜4000回転
価格:1058万円

(文&写真/ダン・アオキ)


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