混戦必至!2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤー候補車の気になる実力①:岡崎五朗の眼

■トヨタのクルマ作りはどのように変わったのか?

新型カローラが逆転満塁ホームランを打てたのは、豊田章男社長による「もっといいクルマを作ろうよ」という掛け声とともに、クルマ作りの際にスペックを追うことを止めたのが大きい。ボディ、エンジン、サスペンション、トランスミッションといったトヨタの各部門が、それぞれクルマに合わせて最適なスペックのものを開発し、最終的に1台のクルマへと集約する…。これが、従来のトヨタのクルマ作りだった。しかし、いいクルマを作るには、もっと社内で横断的に、各部署が手を組んで取り組まなくてはいけない、そして、それぞれがハーモニーを奏でなければいけない、ということに気づき、カンパニー制へと社内の仕組みを変え、エンジニアたちのマインドも変えて、個々の技術の最適値ではなく、クルマ全体としての最適値をみんなで作っていこう、という方向へとシフトしたのが、今のトヨタのクルマ作りだ。

こうした手法は、場合によると、スペックダウンを強いられる部署も出てくる。例えばトランスミッションは、効率を追い求めようとすると、単体での最適値が自ずと決まってくる。しかしそれをクルマに組み合わせてみると、ドライバーの感性に合わない、なんてこともあるのだ。従来の手法のままであれば「感性って何? 優劣は数値で決めよう」と、新型カローラでもスペック重視でクルマ作りが行われていたかもしれない。そういう意味で、テストドライバーや実験部門といった“人の意見”が、最近のトヨタ車には濃密に反映されてきている。

“The日本車”と呼ぶべきカローラの完成度がこれほどまでにアップしたということは、今回のモデルチェンジにおける最大の価値だと思う。コレを基準に考えると、他のクルマも必然的に良くならざるを得ない。新型カローラの登場で、今後の日本車の進化にがぜん期待が膨らんできた。

 

トヨタ「RAV4」

新型「RAV4」は、全方位的に良くできたクルマだと思う。

まずデザインは、個人的に「アドベンチャー」グレードのそれがとても気に入っている。このところのSUV人気を受け、コンパクトカーなどでもクロスオーバー仕様のデザインを採用したモデルが増えているが、それらの“なんちゃって”モデルが増えれば増えるほど、スズキ「ジムニー」やジープ「ラングラー」、メルセデス・ベンツ「Gクラス」といった、骨のあるプリミティブなモデルへの注目度が高まってくる。

そんな状況にあって、RAV4、特にアドベンチャーグレードには、ヘビーデューティさやワイルドさを感じさせるデザイン要素が採り入れられていて、SUVブームの中でも埋没しない、確固たるポジショニングを確立。ひと目でRAV4と分かる個性がプラスされている。

キャビンやラゲッジスペースの広さも、新型RAV4の魅力のひとつだ。大人4名が乗っても車内はゆったりしているし、荷室には遊びや趣味の道具を気兼ねなく積み込める。アウトドア人気が高まっている昨今、そういうガシガシ使えるクルマに仕立てられている点も、人気を呼ぶ大きな要因となっている。

RAV4は走りも上出来だ。先日、助手席とリアシートに人を乗せ、4名で移動する機会があったのだが、走り出してすぐ、後席に座る人から「このクルマ、いいですね」との感想が聞かれた。ジャーナリストや自動車メディアに携わる人ではなく、普通の人であっても、走りの出来の良さを感じられるほど、RAV4は質感の高い乗り味を実現できている。それは、サスペンションがフリクションを感じさせることなくきれいに動いていることに起因する。こうした乗り味は、従来は高級車でなければ決して味わえないものだった。

RAV4の上質な走りは、しっかりと作り込まれたハードウェアによる恩恵だが、それはトヨタのエンジニアたちが、上質な走りを生み出すためのノウハウをしっかりと積み重ねていることの現れでもある。

トヨタはコンパクトSUVの「C-HR」を開発する際、フリクションを感じさせないサスペンションを実現するために、減衰力を始めとするショックアブソーバーのチューニングを徹底的に吟味した。それは高コストにつながり、カタログを華やかに彩るスペックや売り文句にもなりにくいものだったが、従来のそれと乗り比べると、やはり乗り味の違いは明らかだったという。

その際に得られた情報を解析し、サスペンションがどのように動くとドライバーは気持ちいい走りだと感じられるのかを分析。そうして蓄積してきたノウハウが、新型RAV4の走りにも相当盛り込まれている。最近のトヨタ車、特に今回、10ベストカーに選出されたRAV4とカローラの走りには、トヨタの開発陣が積み重ねてきた財産が上手く反映されているようだ。

先のロサンゼルスオートショー2019でアナウンスされたように、この先RAV4には、PHEV(プラグインハイブリッド車)が追加される予定だ。「RAV4プライム」と呼ばれるこのモデルは、現行モデルのハイブリッド車よりも強力なモーターを搭載。302馬力を発揮し、静止状態から96km/hまでの加速タイムは歴代のRAV4で最速となる5.8秒と、かなりの駿足を誇る。トヨタはこれまで、ハイブリッド車やPHEVではエコ性能を重視していたが、新しいRAV4プライムは燃費と同様、動力性能も重視している。こうした点からも、トヨタのクルマ作りの変化が感じとれる。<Part2に続く>

(文責/&GP編集部)


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