爽快の謳い文句はウソじゃない!ホンダ「シビック」の走りは“タイプS”級の完成度

■ライバルよりボディが大きく後席の居住性に優れる

シビックは2020年、グローバルマーケットで約67万台が生産された。これは同73万台の「CR-V」に次ぐホンダ車で2番目の記録であり、1972年のデビューからの累計生産台数も、実に2700万台を数える。つまりシビックは、2022年に誕生50周年を迎える長い歴史だけでなく、セールスの面からもホンダにとって重要な車種なのだ。

そんなホンダの大黒柱が、フルモデルチェンジで新型へと生まれ変わった。前回のレポートでは、新型の概要やパッケージングの変化、プロトタイプによるテストコースでのインプレッションなどをお届けしたが、今回は市販モデルを公道で試乗しての印象をお伝えしよう。

まず始めにおさらいしておくと、シビックは“Cセグメント”ハッチバックというクラスに属し、日本車ではトヨタ「カローラ スポーツ」や「マツダ3」、スバル「インプレッサ スポーツ」などがライバルとなる。同様に、輸入車ではフォルクスワーゲン「ゴルフ」などが競合車種となるが、シビックはそれらライバルに対してボディサイズが大きく、リアシートの居住性に優れているのが特徴だ。

そんな新型のボディバリエーションは、ハッチバックだけのラインナップとなった。先代モデルで用意されていた4ドアセダンは、新型では海外仕様のみの設定となっている。またパワートレーンは、現時点では1.5リッターターボのみの設定だが、2022年にはハイブリッド仕様や、ハイパワーエンジンを組み合わせた武闘派のタイプRも登場することがアナウンスされている。

■ドライバー重視のスッキリ爽快な視界

今回、ワインディングロードを中心に新型シビックをドライブした印象をひと言で表現するなら、それは「スポーツカーのような心地良さ」となる。

といっても、本格的なスポーツカーのように飛びきりパワフルだとか、ハンドリングがものすごくシャープだとかいう走り味ではない。運転していると、まるでスポーツカーのようなファンな感覚を得られ、それがドライバーの気持ち良さにつながっているのだ。

ホンダによると、新型シビックのコンセプトワードは“爽快”だというが、ここからは「どこが“爽快”なのか?」について、ひも解いてみたい。

車内に乗り込んでまず感じるのは、フロントシートの出来栄えの良さだ。まるでドイツ車のスポーツモデルのようにサイドサポートが大きく張り出していて、座り心地が少々タイトなのだ。

そんなシートに腰を下ろして気づくのは、視界が広いこと。特に、斜め前方が見やすくなっている。視界がいい理由は主にふたつある。

ひとつは、ドアミラーの取り付け部がサイドウインドウ最前部からドアへと変更されたこと。これまで塞がれていたミラーとフロントピラーとの間に空間が生まれ、斜め前方の視界が拡大したのだ。

もうひとつの理由は、フロントピラーの付け根の位置を後方へ50mm下げたこと。つまりピラーがドライバー側へと近づいたのだ。そのおかげで、水平視野角(左右ピラー間の視界の広さ)は先代の84度から87度へとわずかながら拡大している。

ドアミラーの取り付け位置とフロントピラーの位置を変更したことで、交差点を曲がる時や、峠道でキツいコーナーを曲がる際などに、斜め前方がよく見えるようになった。まず新型シビックは、視界がスッキリ爽快なのだ。

■思った通りに加速して軽快に曲がる

走り始めると、新型シビックは加速のリズム感に優れていることに気づく。それは単に、エンジンが力強いとかレスポンスがいいといった評価ではなく、ドライバーが「こんな感じに加速して欲しい」と思った通りに反応してくれる印象なのだ。

その要因として考えられるのは、まずトランスミッションであるCVTの進化だ。新型のCVTはトルコン容量が増えたことで、エンジンのトルクをしっかりと受け止められるようになった。それが結果として、アクセル操作に対する加速のダイレクト感につながっている。

さらには、ドライバーのアクセル操作に対する車速の上昇、エンジン回転数の高まり、そして、車速とエンジン音とのチグハグさを解消し、それぞれが同調するように味つけすることで、心地いい加速感を手に入れている。CVT車は「加速フィールが悪い」というのが定説だが、そこにメスを入れて大きく進化させている。ダラダラとした印象がなく、メリハリのある加速感はとても爽快だ。

一方、新型シビックのステアフィールはとてもナチュラルで、ハンドルを切るとスッと向きが変わる。これは、パワステのアシスト量を増やし、これまでより軽い力でハンドルを回せるようになったことによる影響だ。「ハンドルの重いクルマこそスポーティ」という過去の常識を覆したからこそ手に入れられた美点といっていい。

そんな爽快なステアフィールのおかげもあって、コーナリングはとても軽快だ。曲がり始めはスッと素直に向きを変え、そこから先は素晴らしいライントレース性能を発揮してくれる。まるでレールの上を走っているかのように、進路が内側や外側へ乱れることなく、ドライバーがねらった通りに安定して曲がってくれるのだ。

直線からハンドルを切って旋回、さらにハンドルを戻して直線へと戻る。ワインディングロードでのドライビングはその繰り返しだが、新型シビックはその際のリズム感に優れていて、とてもスムーズに走れるのだ。

その要因は、土台となっている車体構造がしっかりしているため。その強固な車体に、しなやかに動くサスペンションを組み合わせた結果、爽快なコーナリングが成立したといってもいいだろう。

■受注の約4割がMT仕様という新型シビック

公道試乗を通じて感じた新型シビック最大の魅力、それは、峠道を走る時のドライバーとクルマとの一体感だった。まるで手足を動かすかのようにクルマを思い通りに操れる。そんな新型シビックの走りは、「峠道を気持ちよく走るために生まれて来たのではないか?」と思うくらい爽快なものだった。それでいて乗り心地も良好。走りと快適性のバランスの良さには驚かずにはいられない。

そういえばホンダのラインナップには、峠道での気持ちのいい走りと快適性の両立を目指して開発された仕様が存在する。そう「タイプS」だ。新型シビックのラインナップには今のところタイプSは存在しないが、峠道での新型シビックの走りには、まるでタイプSを運転しているかのような錯覚を覚えた。そのくらいクルマとしてのバランスがいいのだ。

確かに319万円〜という価格設定は、ライバル各車に対して割高という印象を否めない。しかし、走りの出来栄えはタイプS級と考えれば、「これはこれでアリかも」という気持ちになってきた。

ちなみに新型シビックには、MT仕様が用意されているというのもクルマ好きとしてはうれしい話だ。日本における新車販売の99%ほどがAT車(デュアルクラッチ式などを含めた2ペダル仕様)という状況にあって、現時点で新型の受注の約4割がMTというのは驚くばかりだ。

<SPECIFICATIONS>
☆EX(CVT)
ボディサイズ:L4550×W1800×H1415mm
車両重量:1370kg
駆動方式:FWD
エンジン:1496cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:182馬力/6000回転
最大トルク:24.5kgf-m/1700〜4500回転
価格:319万円

<SPECIFICATIONS>
☆LX(6MT)
ボディサイズ:L4550×W1800×H1415mm
車両重量:1330kg
駆動方式:FWD
エンジン:1496cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6速MT
最高出力:182馬力/6000回転
最大トルク:24.5kgf-m/1700〜4500回転
価格:353万9800円

>>ホンダ「シビック」

文/工藤貴宏

工藤貴宏|自動車専門誌の編集部員として活動後、フリーランスの自動車ライターとして独立。使い勝手やバイヤーズガイドを軸とする新車の紹介・解説を得意とし、『&GP』を始め、幅広いWebメディアや雑誌に寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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