トラックボールにシェルドライブ…「Let's note」25年超の歴史を振り返る

【1996-1998年】シリーズ誕生

「ノートPC」自体が誕生したのは、1980年代のこと——。Let's noteシリーズの歴史は、1996年に発売された「AL-N1」から始まりました。

AL-N1

▲「AL-N1」

この頃は、他社メーカーとの差別化をするために、意識的にコンパクトなモデルが展開されていたと言います。

パナソニックコネクト 田中氏

▲パナソニック コネクト 田中氏

「当時、パナソニックの前身である松下電器は、は、小型の“サブノート”に力を入れていました。まだラップトップ型のPCが主力で使える時代ではなかったので、あくまでメインとなるデスクトップPCがあったうえで、サブ用途でラップトップPCを使う。そのような時代でしたよね。当時は1時間ぐらいしか電池がもたないのは普通でした」(田中氏)

AL-N1

▲「AL-N1」では、タッチパッドが小さめで操作が難しそうだ

かつてのLet's noteシリーズといえば、筐体に厚みがあるのが印象的でした。この構造は、実は筐体の表面積を減らすことで重量を下げるのに一役買っていると言います。

「我々はフットプリントを小さくすると表現していますが、体積が同じであれば、製品の面積を小さくする方が筐体は軽くなります。 Let's noteはフットプリントを最小にすることで、軽量を追求してきました。」(田中氏)

1997年に登場した第2世代モデル「AL-N2」では、タッチパッドの代わりに「トラックボール」が搭載されました。これも筐体に十分な厚みがあったからこそ、実現したもののひとつと言えます。このトラックボールは、シリーズを象徴するアイコンとなっていき、現在の丸い形のホイールパッドにつながっていきます。

トラックボールの画像

▲小さいタッチパッドの操作性を解消したのが、こちらの「トラックボール」。現在のLet's noteが装備する丸いホイールパッドの原型にもなっている。この写真は1998年発売の「CF-S21」のもの

 

【1998-2001年】ネットワークの発展とスリム化

1998年といえば、Windows 98が登場した時代。PCでは「ネットワーク」がキーワードになっていきました。この頃は、まだ「無線LAN」が普及していない時代でしたが、Let's noteでは「PHS」を使ったコードレスインターネットを提案。「CF-A1」など、先進的なモデルを開発・投入していました。

また、「銀パソ」という言葉が流行ったように、ノートPCの筐体がメタリックなシルバーへと変わっていったのも、この頃でした。こうしたデザインは、今でこそ当たり前に見かけるものですが、その原型はこの頃に生まれたと言えます。

ちなみに、「Let’s note」のロゴも、1999年9月に刷新されました。

 

【2002-2008年】頑丈設計の追求

2002年頃には、OSはWindows XPに。この頃になると「モバイル」での利用スタイルが一般に定着し、それに伴い新たな課題も生まれました。それが「堅牢性」です。実際、通勤・通学時の満員電車内の圧力などによって、ディスプレイが壊れたりした事例もあったとのこと。こうした背景もあり、2002年頃からには、軽く・長時間駆動し・頑丈な機種が登場してきます。

CF-R1

▲「CF-R1」

2002年3月に発売された「CF-R1」は、なんと重さが約960g。この時代にすでに1kgを下回っていました。マグネシウム合金の採用によって軽量化を図りつつ、ボンネット構造によって堅牢性を高めているなど、多くの人がイメージするであろう「Let's note」らしさが固まってきた一台だとも言えます。

CF-W2

▲「CF-W2」

同年11月には、12.1型へサイズアップした「CF-T1」も登場。さらに、2003年6月には、その後継機である「CF-W2」が発売されました。同機には、「シェルドライブ」というパームレストがカパっと貝のように開いて、ドライブが現れるというギミックを採用。

シェルドライブ

▲パカッと開く「シェルドライブ」は、CF-W2から採用された特徴的なギミックだ

「シェルドライブを採用することで、側面から飛び出すドライブと比べて、100gほどの軽量化を実現できました。ちなみに、『CF-W2』ではシェルドライブはホイールパッドの左側にあり、ホイールパッドごと蓋が開きましたが、後継機では軽量化を追求し、レイアウトを最適化することで、右側に移りました」(田中氏)

▲2005年発売のCF-W4は右側が開く構造に

ちなみに、2006年がLet's noteシリーズ10周年の節目。この前後で、さらに堅牢性が強化されたモデルが登場していきました。

CF-W4

▲「CF-W4」

「当時は、首都圏のある鉄道路線の乗車率が非常に高く、“カーブで骨折者が出る”などと言われていた時代でもありました。私の設計としての最初の仕事が、その満員電車に乗って、実際にかかる荷重を計測してくることだったのを覚えています。こうした調査によって、携行しているノートPCに累積100kgfもの荷重が加わっていることがわかったのです。2005年5月に発売した『CF-W4』が“耐100kgf級の頑丈設計”を謳っていたのは、決して数字のキリが良いからではなく、こうしたデータに基づいていたんですよ」(田中氏)

ボンネット構造

▲CF-W4では、天板のボンネット構造をはじめとする複数の工夫によって、100kgまでの頑丈設計が実現された

同様に、2007年3月発売の「CF-R6」では、76cm落下試験をクリアし、キーボード全面が防滴になるといった進化を遂げました。この76cmという数値も、多くのデスクの高さを実際にメジャーで図って、基準として定めたとのこと。

 

【2009-2011年】サブからメインへ

2009年は、Windows 7が登場した時代。この頃からモバイルノートは、徐々に“デスクトップPCに対するサブPC”という立ち位置ではなくなってきました。OSが成熟し、プロセッサーなどの性能も高まってきたことで、“モバイルノートがメイン”という捉え方ができるようになっていきます。Let's noteは、こうした変化をいち早く捉え、高性能なモバイルノートを追求していったパイオニア的な存在だったと言います。

CF-S8

▲「CF-S8」

「2009年10月に発売した『CF-S8』では、“標準電圧版”のCPUを先駆的に搭載したことがポイントでした。ただし、これによってデスクトップPCにも引けを取らない性能を実現できる反面、放熱の問題や、バッテリー消費量の増加などの課題も生まれます。S8はこうした部分にチャレンジした一台でした」(田中氏)

ちなみに、いわゆる「タブレットPC」が登場しだしたのも、この頃。Let's noteシリーズとしても、2010年に、画面の向きをぐるっと変えられる2in1型の「CF-C1」が投入されています。

 

【次ページ】最新モデルはデザインにもこだわりが

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