【小宮山雄飛 蕎麦呑みの名店】『神田錦町 更科』で江戸の蕎麦の粋に触れる

◾️菊正宗と味わう至福の蕎麦前タイム

ということで、まずは定番の板わさ。東京のお蕎麦屋さんで板わさといえば、昔から小田原『鈴廣』のかまぼこが定番中の定番。

 

▲「板わさ」と「菊正宗(1合)」。共に700円

▲「板わさ」と「菊正宗(1合)」。共に700円

少し厚めに切られたかまぼこは、歯応えがあって美味。
合わせるお酒は、こちらも老舗で酒といえば菊正宗。

江戸時代、上方で作られ江戸へ運ばれてくるお酒は「下り酒」と呼ばれ、江戸っ子に愛されていました。

ちなみに「くだらない」という言葉の語源は、江戸に下るものは良いもので、そうでないものは「くだらない」というところから来たとか。

こういう雑学を知るのもまた、蕎麦呑みの楽しみの一つ。

ご主人がお薦めと出してくれた「油揚げパリパリ焼き」、これもまた、きつね蕎麦の種である油揚げを使った一品。

 

▲「油揚げパリパリ焼き」700円。夜のみのつまみ。地元神田の豆腐屋さんの油揚げを使っている

▲「油揚げパリパリ焼き」700円。夜のみのつまみ。地元神田の豆腐屋さんの油揚げを使っている

その名のとおりパリパリに焼かれた油揚げがお酒に合います。あまり凝りすぎた料理より、こういうちょっとした一品というのが、蕎麦前にはちょうどいい。

〆のせいろは、極細ながら江戸蕎麦らしくしっかりとコシがあり、喉越しも最高。辛めのつゆにさっとつけて、ズルズルっと一気にすするのが東京の蕎麦の醍醐味。

 

▲「せいろ」800円

▲「せいろ」800円

さらに嬉しいのは、老舗ながらも町の蕎麦屋さんの心意気で、お蕎麦の盛り(量)がしっかりあるところ。

 

▲極細の蕎麦は喉越し良好

▲極細の蕎麦は喉越し良好

なので、普段使いのお店として、サラリーマンや近隣の人でランチ時などは連日行列。江戸の庶民も、我々と同様に「ちょっと蕎麦でも一杯たぐってくか」と気軽に蕎麦を楽しんでいたのかなんて、ノスタルジーに浸るのもいいでしょう。

◾️温かい蕎麦も絶品

温かい蕎麦でぜひ食べてほしいのが、「しょうが天そば」。立ち食い蕎麦などで見かける、紅生姜をかき揚げにしたものとは違い、こちらは生の根生姜を1本ずつ揚げたもの。

 

▲「しょうが天そば」1500円。ご主人が10年ほど前に考案したという人気の一品。根生姜をかき揚げではなく1本ずつ揚げているのが旨さの秘訣[食楽web]

▲「しょうが天そば」1500円。ご主人が10年ほど前に考案したという人気の一品。根生姜をかき揚げではなく1本ずつ揚げているのが旨さの秘訣[食楽web]

揚げることで、生姜の辛さもちょうど良くなり、味・香り・食感ともに最高! つゆを吸ってトロっとなった衣と、シャキッとした生姜の食感のコントラストも絶妙です。

思わず下のお蕎麦のことを忘れて、しょうが天ばかり食べ続けてしまいそうな美味しさですが、江戸蕎麦は粋が命。特に温かいお蕎麦は伸びないように、出されたらさっと食べましょう!

 

▲根生姜の爽やかさがたまらない

▲根生姜の爽やかさがたまらない

せいろもかけも、しっかりとしたコシと喉越しで大満足。ツマミと蕎麦を堪能したら、長っ尻はせずに「ごちそうさま!」と、さっと出る。

そんな江戸の粋な楽しみ方をしたくなる、老舗の名店です。

◾️追伸

▲江戸の蕎麦文化に精通する四代目店主・堀井市朗さんと店先で

▲江戸の蕎麦文化に精通する四代目店主・堀井市朗さんと店先で

最後に、こちらのごお店の粋なエピソードを。

僕が初めてこちらのお店を訪れた時の話。一通りツマミとお蕎麦をいただいて、いざお勘定という段階で、なんと財布を家に忘れてきたことに気づきました!

スマホはあるけど、こちらのお支払いは現金のみ。お店の方に、財布を忘れたことを告げたところ、「いいですよ、今度来た時に払ってもらえれば」と、嫌な顔ひとつせず、お店の名刺の裏に値段を書いて、さっと渡してくれました。

これぞ江戸の粋というものでしょ! ご主人、女将さん、その節は大変ありがとうございました。また一つ江戸の蕎麦文化に、直に触れられた気分でした。

 

<文/小宮山雄飛 写真/C STUDIO 中村優子>

神田錦町 更科

住所:東京都千代田区神田錦町3-14
TEL:03-3294-3669
営業時間:11:00〜14:00、17:00〜18:30
土11:00〜14:00
定休日:土曜夜・日・祝

 

小宮山雄飛|ホフディランのVo&Key担当。ミュージシャンの傍ら、グルメ番長として食のシーンでも活躍し、様々な雑誌やWEBサイトでの連載、レシピ開発なども行う。著書には『旨い!家カレー』『レモンライス レシピ』『小宮山雄飛 今日もひとり酒場』など。テレビ、ラジオ番組などの出演も多数。
>>ホフディランofficial サイト
>>@yuhikomiyama

 

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