CT125ハンターカブの歴史を紐解く。「アメリカでカブを売り出すために開発された」その65年もの変遷とは?

■日本市場では芳しい評価を得られなかったハンターカブ

▲日本国内向けモデルとして1968年に初めて発売されたCT50(画像:ホンダ)

 

CT90トレール90がアメリカで毎年のように進化を遂げていった時代、実は、1968年に日本国内でもCT50の名で同様のモデルが発売されたことがありました。「ハンターカブ」の名こそ冠されませんでしたが、モデルコンセプトはまんまハンターカブ。山間地や不整地での配達などを想定し、アップマフラー、バーハンドル、フレームカバーなどの装備に加え、日本初の副変速機も搭載しました。ただし、この頃の日本はまだレジャーブームが起こる前。わずか数年で生産終了になりました。

ところで、同時代のホンダはモンキー、ダックスなどを発売し、他社を巻き込むほどの「レジャーバイク」ブームを巻き起こしますが、なぜかトレールモデルの発売には後ろ向きだったように感じます。おそらくは、1968年発売のCT50の失敗があったからではないかと思いますが、「レジャーバイク」ブームが終焉を迎え、またホンダ・ヤマハとの熾烈なシェア争いとなった、いわゆる「HY戦争」の最中で、ついに1981年に日本国内仕様のハンターカブ、CT110をリリースします。

▲1981年に日本国内向けモデルとして発売されたCT110(画像:ホンダ)

 

コアなホンダファン、レジャーバイクファンにとっては悲願だった国内仕様モデルの発売でしたが、同時期はミニバイクはスクーターが瞬く間に広まっていった頃。CT110もまた、かつてのCT50同様にヒットに恵まれず、わずか2年の販売期間で生産終了となりました。

■オーストラリア仕様の逆輸入車が一部の熱狂的なファンを育てた

▲日本では芳しい評価を得られませんでしたが、アメリカでは支持を得続けたCT110トレール110の1982年モデル(画像:ホンダ)

 

一方、アメリカでは、CT110トレール110が1980年に発売され、これもまた相応のヒットに至ります。1981年、1982年、1983年、1984年と毎年のようにマイナーチェンジを重ねていきます。

▲アメリカ向けCT110トレール110の1983年モデル(画像:ホンダ)

 

▲アメリカ向けCT110トレール110の1984年モデル(画像:ホンダ)

 

1986年にはアメリカ向けのCT110トレール110は生産終了になりますが、これに入れ替わるように、オーストラリアやニュージーランドでCT110の販売がスタート。特にオーストラリアでは、このCT110が郵政公社の公式郵便配達バイクとして正式採用され、2012年まで活躍し、多くのオーストラリア人が周知する「国民的働くバイク」として知られるようにもなりました。合わせて、日本では逆輸入車を扱う業者が販売をしたことで、熱狂的なファンを育てる格好にもなりました。

また、前後しますが、1984年にはハンターカブのコンセプトを高めたオーストラリア市場向けに派生モデル・CT200が発売されました。日本国内モデルの発売はありませんでしたが、2010年代まではCT110同様、逆輸入として日本でも入手することができ、一部の熱狂的な今も中古車市場でチラホラ見かけるモデルでもあります。

▲ハンターカブシリーズのコンセプトをブラッシュアップさせて発売された海外向けモデルCT200(画像:ホンダ)

 

▲1986年モデルを最後にアメリカ向けハンターカブは生産終了に至るも、オーストラリアやニュージーランドで販売を開始。オーストラリアでは郵便バイクにも採用されました(画像:ホンダ)

 

■輸出向けCT110生産終了の翌年にクロスカブCC110が登場

前出の通り、オーストラリア、ニュージランド向けのCT110は2012年モデルをもって生産終了となりましたが、この情報が日本のCT110ファンに伝えられると、「新車のまま持っておきたい」といったユーザーが続出。逆輸入車の2012年モデルの新車在庫は高騰し、あっという間に市場から姿を消しました。

また、日本仕様向けとしてホンダは翌年2013年にハンターカブのコンセプトを感じさせるモデル、クロスカブCC110発売します。

▲輸出向けCT110が生産終了となった2012年には、スーパーカブシリーズに、どことなくハンターカブっぽいテイストを加えたクロスカブCC110がラインナップされました(画像:ホンダ)

 

CT110の生産終了の翌年の発売なので、ホンダの「逆輸入車で支持を集めるハンターカブの人気を、うまいこと新モデルで奪還したい」といった思惑がなんとなく感じられました。肝心のクロスカブCC110は、CT110ほどのトレール性能は持たないものの、「スーパーカブ経由のトレール」の原点に立ち返ったようなモデルでした。相応の話題となり、後には50ccモデルもラインナップしました。

 

■2019年の「モーターショー」でCT125が初お目見え!

実は、筆者は20代前半からCT110、CT50といったハンターカブを5台乗り継いだ、根っからの「CT党」でした。前出のCT110の生産終了は本当に惜しいものがありましたが、ちょうど愛用していたCT110が2万キロを超えたところで乗り替えを決意。2019年にクロスカブ110に乗り換えた経緯があります。

そのクロスカブを買って数ヶ月後、驚くべきモデルを目にしました。それが2019年の「第46回東京モーターショー2019」に出品されたCT125でした。

▲2019年の「第46回東京モーターショー2019」に出品されたCT125

 

▲どことなくモタード的な印象も与える「進化系ハンターカブ」とも言えるスタイリングでした

 

タイホンダが開発し、かつてのCT110の細部をブラッシュアップさせた1台で、トレッキング性能などは控えめになりながらも、どことなくモタード的な印象も与えるモデルでした。しかも、同ショーのホンダ・ブース担当者によれば「公式発表はまだこれからですけど、来年あたりに市販化する」とも。

「うわ、早まった。クロスカブじゃなくて、この新しいCT125にすれば良かった」と思いましたが、同時に「いやいや。クロスカブもいいバイクじゃないか。クロスカブを乗り込んだ後にCT125に乗り換えよう」とも思いました。

■ハンターカブシリーズはさらなる未来へと走ってゆく

▲2020年に発売され、コロナ禍でのバイク需要の高まりと合わせて大ヒットとなったCT125ハンターカブ(画像:ホンダ)

 

▲現行モデルのアステロイドブラックメタリック(画像:ホンダ)

 

▲現行モデルのマットフレスコブラウン(画像:ホンダ)

 

ホンダ・ブース担当者の話通り、2020年にCT125ハンターカブが発売されます。おそらく、ホンダとしては過去のCT50、CT110の国内仕様の失敗から、戦々恐々とした思いでの発売だったのではないかと思いますが、これがいきなり大ヒット。冒頭で触れたコロナ禍でバイク需要が急増したこともあり、その乗りやすさとスタイルが広い層から支持を得た、というわけです。

▲ハンターカブはこれからも未来へ走ってゆく(画像:ホンダ)

 

ここまでの通り、1961年の「ハンターカブの始祖」誕生から、紆余曲折ありながらも進化を遂げ、そして日本国内ではやっと評価を得るに至ったハンターカブシリーズ。現行の2026年モデルはアステロイドブラックメタリック、マットフレスコブラウン、そしてお馴染みのグローイングレッドの3色。いずれのカラーもCT125ハンターカブの、歴代の構成を継承しながらも未来的なイメージも加えたフォルムによく合います。

ゆうに65年もの歴史を持ち、唯一無二の存在感を放ち続けるハンターカブシリーズの未来はまだまだこれからも続くことでしょう。

<取材・文/松田義人(deco)>

松田義人|編集プロダクション・deco代表。趣味は旅行、酒、料理(調理・食べる)、キャンプ、温泉、クルマ・バイクなど。クルマ・バイクはちょっと足りないような小型のものが好き。台湾に詳しく『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)をはじめ著書多数

 

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