■200mmを超えると、街がグラフィカルな被写体に変わる
200mmを超えるあたりの望遠域は、筆者が普段の街歩きでほとんど使わない焦点距離です。実際にファインダーをのぞいてみると、目の前に広がっている街の中から、狭い範囲だけが切り取られます。
▲RX10 V 1/800、F5.6、ISO250、191mm(35mm換算)
新しいタワーマンションと古い団地の対比が面白いと思ってシャッターを切った1枚。実際には距離のある団地とタワーマンションが、望遠で切り取ることで隣接しているように重なりました。
望遠側でも細かいところまで、思っていた以上に解像していて、RX10 Vのセンサーとレンズの底力を感じます。
▲RX10 V 1/1000、F5.6、ISO250、288mm(35mm換算)
望遠レンズを通すことで、風景の一部として見えていたものが、独立した被写体として浮かび上がってくる感覚になります。
離れた位置から望遠で切り取ると、手前と奥の大きさの差が小さくなり、重なりや繰り返しがよりグラフィカルに。
▲RX10 V 1/1000、F5.6、ISO100、191mm(35mm換算)
普段なら気にもとめないような高速道路の橋脚が、望遠によって切り取られることで空を映すための額縁のように写りました。
RX10 Vの高倍率ズームは、すでに見つけている被写体を大きく写すだけでなく、普段見ているものを違った切り取り方で、新しい被写体として発見するためにも使えます。
▲RX10 V 1/400、F4.0、ISO200、340mm(35mm換算)
▲RX10 V 1/400、F8.0、ISO320、310mm(35mm換算)
300mmを超えるあたりから、ファインダーの中に見える景色は肉眼の印象と大きく変わってきます。並んだタクシーや看板は、圧縮され繰り返しの模様のように。
形を繰り返しとして見せたり、建物の隙間から一部分だけを抜き出したり、高層住宅の窓を平面的な模様として捉えたり。街を場所として説明するより、線や面、色の組み合わせとして切り取りたくなりました。
背景をぼかすだけでなく、離れた建物や人を重ね、街の密度を高く見せる。こうした圧縮効果も、望遠を街中で使う面白さのひとつです。

上は24mmで撮影した写真です。同じ場所から600mmまでズームすると、下の写真の画角になります。今回の街撮りでは600mmをうまく使いこなせませんでしたが、肉眼では細部を確認しづらい被写体まで引き寄せられるため、野鳥や航空機など、撮影する対象が明確な場面では活用しやすそうです。
■レンズ交換なしだから、見つけた瞬間に画角を変えられる

24-600mmを一本で使える最大の利点は、被写体に合わせてすぐに画角を変えられることです。
建物全体を24mmで撮影し、少しズームして入口付近を切り取り、最後に遠くの看板や窓を600mmで狙う。これだけ焦点距離が離れていると、レンズ交換式カメラでは複数本のレンズが必要になりますが、RX10 Vならズームリングを回すだけ。
レンズを交換している間に人が移動したり、光の状態が変わったりすることもありません。広角側から望遠側まで行き来しながら、その場で見つけたものへ素早く反応できます。
最高画質だけを追求するカメラではありませんが、ズーム全域で画質に大きなムラを感じにくく、24mmから600mmまでを安定して使えることの価値は、実際に一日歩いてみるとよく分かります。
■同じ場所に立ったまま、世界の見え方を変えられる

RX10 Vを街に持ち出して最も面白かったのは、望遠域で遠くのものを大きく撮れたことだけではありません。
24mmでは街全体を眺め、標準域では人や建物を自然に切り取り、200mmを超えると風景の中から一部分を探し、街を形や色として捉える。同じ場所にいても、焦点距離によって被写体の探し方そのものが変わりました。
もちろん、単焦点レンズや限られたズーム域の中で、自分の立ち位置を考えながら撮影する面白さもあります。RX10 Vはそれとは反対に、非常に多くの選択肢を用意してくれるカメラだと感じました。
遠くのものを撮る予定がなくても、24-600mmによって普段とは違う街の見方を楽しめる。旅先だけでなく、見慣れた街を少しだけ違った見え方にしてくれるカメラ。RX10 Vはそんな1台なのかもしれません。
次回はポートレート撮影で、高倍率ズームがどのような使い勝手なのかを検証します。
>> ソニー「RX10 V」
>> 趣味カメラの世界
<取材・文・写真/田中利幸 モデル/朱里(@punta_ma96)>
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