CX-8はありふれてるって人に!プジョー「5008」は7人乗りSUVにプラスαの魅力あり

■ミニバンからSUVへ大変身した5008

先代の5008は、シトロエンの「C4ピカソ」とコンポーネンツを共有するミニバンでしたが、2016年のパリモーターショーで3008とともにデビューした現行モデルは、時流に乗ってSUVの姿をまとって登場。

アルミニウムや超高張力鋼板を用いて“強く”、“軽く”作られた新世代プラットフォーム“EMP2”を使用し、3008のそれよりホイールベースを165mm延長して2840mmに。ボディサイズは、全長4640×全幅1860×全高1650mmなので、3008より190mm長い計算ですね。日本車でいえば、同様の成り立ちを持つマツダ「CX-8」に近い大きさです。

日本市場で販売されるのは、1.6リッターの直4ガソリンターボ(165馬力)を積む「アリュール」と「クロスシティ」、2リッターの直4ディーゼルターボ(177馬力)を搭載する「GT BlueHDi」という3グレード。ガソリンターボには6速AT、ディーゼルターボには新開発の8速ATがおごられ、駆動方式はいずれもFF(前輪駆動)となります。

■目の前に広がるプジョー自慢の“i-Cockpit”

今回の試乗車は、ディーゼルエンジン搭載のGT BlueHDi。クロームが多用され、ライオンのエンブレムが強調されたフロントグリル。フルLEDのヘッドランプの上には、同じくLEDのポジションランプが並びます。饒舌で華やかなフロント回りですが、タフなSUVとしての威圧感は薄い。いかにもさり気ない都会派SUVです。試乗車の、ホワイトパールのペイント(8万1000円のオプション)にブラックダイヤモンドルーフの組み合わせもクリーンでいいけれど、ボディ各所にクローム仕上げのパーツが配されるので、ダークカラーだとさらに一層艶やかになりそう。

泥や砂とはあまり縁がないイメージはドアを開けても同様で、試乗車にはオプションの豪華内装“ファーストクラスパッケージ”(30万円)が装着されていたので、なおさら。シートは“テップレザー”とアルカンタラのコンビネーションに仕立てられ、凝ったステッチが施されます。フロントシートヒーターや、多彩な方法で上体をもみほぐしてくれる“マルチアクティブランバーサポート”も装備。ニッポンの豪華ミニバンに負けない“おもてなし”が待っています。

ドライバーズシートに座れば、プジョー自慢の“i-Cockpit”が目の前に広がります。メーターパネルはフル液晶で、さまざまな情報を表示可能。センターコンソールには、トグル調のスイッチがズラリと並びます。

8インチのスクリーンはタッチセンサー式で、専用カーナビ(19万7820円のオプション)を始め、アンビエントライトやパフューム(!)の設定も行えます。このままボタンひとつで「目的地まで自動運転で行ってくれるのでは?」と無茶な期待を抱きたくなるほどの未来派インテリアですが、一方で、小径で低い位置に置かれるステアリングホイールが、プジョーらしいスポーティな走りを予感させます。

■日常使いが楽しいプジョーらしさは健在

実際、ディーゼルエンジンに火を入れて走り始めると、プジョーのコンパクトカーのような軽やかさはないけれど、ステアリングを切った通りにラインを描くシュアなハンドリングは健在。ことさらハイパフォーマンスではないけれど、日常使いが楽しいプジョーらしさがよく残されています。

各シリンダーに精緻に燃料を噴射するコモンレール式直噴システムを備えた2リッターのターボディーゼルは、177馬力/3750回転の最高出力と、40.8kgf-m/2000回転の最大トルクを発生。低回転域から4リッターの自然吸気ガソリンエンジンに匹敵する力強さを持つ、SUVたる5008によく合ったパワーソースです。

そんなエンジンに組み合わされる8速ATは、“シフト・バイ・ワイヤ”機構を採用した最新型で、従来の6速AT級のコンパクトさ。また“ECOモード”を選択すると、スロットルを閉じた際にエンジンとトランスミッションを切り離し、さらなる燃費向上を図ります。

■3列目シートはワンタッチで床下に収納

ファン・トゥ・ドライブな5008ですが、2列目以降のシートも充実。3人分が用意されたセカンドシートは150mmの前後スライドが可能で、背もたれは5段階にリクライニングします。シートがそれぞれ独立しているのは、「クルマはあくまで移動体である」という思想からでしょう。時に“応接間の延長”を思わせるベンチシートが使われる日本のミニバンとは、ちょっと雰囲気が異なります。いい悪いは別にして、こうした“彼我の差”を意識させられるのが、輸入車に乗る醍醐味のひとつ、ですね。

サードシートはしっかりした造りですが、スペースは最小限。ワンタッチでキレイに床下に収納される“さま”を確認すると、今度は「日本車のシートアレンジをよく研究しましたね」と、ひと言コメントしたくなります。

都会の風景が似合うプジョー5008ですが、スノー、マッド、サンドなど、5種類の路面において前輪の駆動力を最大限に引き出すトラクションコントロール“アドバンスドグリップコントロール”を備えて、一定のオフロード性能も備えます。

実用一辺倒でなく、ヘビーに過ぎず、それでいて退屈することなく付き合えるSUV。プジョー5008、結構、ねらい目かもしれません。

<SPECIFICATIONS>
☆GT BlueHDi
ボディサイズ:L4640×W1860×H1650mm
車重:1720kg(パノラミックルーフ装着車)
駆動方式:FF
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:177馬力/3750回転
最大トルク:40.8kgf-m/2000回転
価格:473万円

(文&写真/ダン・アオキ)


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