初代はフロントが分離するバイクだった!?レジャーバイクから進化系バイクへ。ホンダ・ダックスシリーズ57年の物語

■モンキーと並んで70年代のレジャーバイクブームの草分けに

初代はダウンフェンダー、ダウンマフラーを装備していたり、当時としてはモダンなキャンディカラーを身にまといったりと、今見ると、オン・オフ双方を意識して開発されたように映ります。

しかし、同年には早くもオフロード・ユーズに特化させ、アップマフラーなどを搭載した「エクスポート」と呼ばれる2代目ダックスが登場。

▲2代目ダックス(50/70)エクスポート。オフロード・ユーズに特化させたモデルです(画像:ホンダ)

 

この2代目ダックスは、同時期のモンキーと合わせて「レジャーバイク」ブームの草分け的なモデルとなり、さらに他社にも影響を与えるほどのヒットを収めました。ちなみにダックスやモンキーの対抗馬的なモデルの代表がスズキ・バンバン、ヤマハ・ミニトレなど。結果的に70年代はこれら「レジャーバイク」モデルが複数存在し、個人的には「日本の125cc以下のミニバイクが最も楽しかった時代」と思っています。

 

■ブーム終焉、「HY戦争」の混乱に巻き込まれ生産終了

前述の他社からの対抗馬モデルに負けまいと、ホンダはダックスの派生モデルも続々と開発します。オリジナルのダックスより、さらに走破性を高めたマイティダックス90(1972年)や、よりも太いタイヤを履かせ従来型のガソリンタンクを配置したノーティダックス(1973年)など。いずれのモデルもまた国内外でコアな支持を集めます。

▲1972年発売の派生モデル・マイティダックス90。前後14インチホイールを採用し、走破性を高めました(画像:ホンダ)

 

▲1973年発売の派生モデル・ノーティダックス。カブ系ではなくCB系のエンジンが採用され、従来型のガソリンタンクも装備しています(画像:ホンダ)

 

▲これら派生モデルをリリースしながら、オリジナルのダックスもマイナーチェンジを重ねていきます。写真は1976年モデルのダックス(画像:ホンダ)

 

オリジナルのダックスもマイナーチェンジを重ねていきますが、70年代後半に差し掛かると、レジャーバイクブームにかげりが見え始めます。特に象徴的なのが、1977年のヤマハ・パッソル発売。「軽くてギアチェンジもなく簡単に乗れる」とし、80年代以降に巻き起こる一大スクーターブームの礎にもなりました。

こういった時代の転換期にあった1979年、ホンダはチョッパー型のダックスを発売。当時の若者の多くが憧れた「アメリカンスタイル」に狙いを定めたモデルでした。

▲1979年発売のチョッパー型のダックス(画像:ホンダ)

 

▲当時の若者の多くが憧れた「アメリカンスタイル」をダックスに投影しました(画像:ホンダ)

 

しかし、この時期に前述のパッソルをきっかけに勃発したホンダ・ヤマハ間での熾烈なシェア争い、いわゆる「HY戦争」が本格化。各社ともに新モデルのラインナップを増やし始めた頃であり、アメリカンスタイルのダックスは芳しい注目を得られませんでした。

また、レジャーバイクブームが終焉となった80年代に入ったところで、ホンダは「これまでのレジャーバイクをモンキー、ゴリラに集約する」としてダックスの生産終了を決断。結果的にアメリカンスタイルのダックスが最終モデルとなりました。

■ネオクラブームで復活するもわずか4年で生産終了に

▲1980年代の輸出向けダックス(画像:American Honda Motor)

 

一方、80年代から90年代にかけても「ダックス」の輸出モデルの生産は続けられていて、「アウトドアシーンで楽しめるミニバイクの定番」として親しまれ続けました。

当時は携帯電話はおろかインターネットも一般浸透していない時代でしたが、「海外ではまだダックスが販売されている」ことを知った日本国内のコアなファンの中には、逆輸入で輸出向けモデルを入手する人もいたほどでした。

また、80年代から90年代にかけての日本のバイクシーンは、ヤマハ・SR400やピアジオ・ベスパなどの大ヒットでネオクラシックブームが巻き起こり、合わせて70年代の旧車の中古車が高騰した時代でもありました。

こういった時勢を受けて、1995年についにダックスが復活を果たします。初期「ダックス」の雰囲気を漂わせた折りたたみハンドル仕様の一方、12Vで初期にはなかったCDI点火などを採用し、往年のファン・新しいファン双方に支持されました。

▲1995年に復活したダックス(画像:ホンダ)

 

しかし、この「90年代ダックス」も1999年に施行された「平成11年二輪排ガス規制」の適合モデルが開発されず、わずか4年で生産終了となりました。

■カブ、モンキー、ハンターカブに続き2022年に復活!

レジャーバイク黄金期を築いたダックスが、2度の生産終了に至ったわけで、個人的には「もう復活は難しいだろう」と思っていました。しかし、2022年に吉報がバイクシーンにもたらされます。

ダックス125として復活するとのニュースでした。

すでにモンキー125、スーパーカブC125、CT125ハンターカブと、ホンダの歴史を語るに欠かせないアイコン的モデルが続々と125ccクラスで復活を遂げていましたが、ダックスをこのクラスで復活させてくれたホンダの心意気に心が躍りました。

▲2022年に復活したダックス125(パールネピュラレッド)(画像:ホンダ)

 

▲2022年に復活したダックス125(パールカデットグレー)(画像:ホンダ)

 

▲ダックス125の2023年モデルに追加された新色、パールグリッターリングブルー(画像:ホンダ)

 

▲ダックス125の2024年モデルに追加された新色、パールシャイニングブラック(画像:ホンダ)

 

▲ダックス125の2026年モデルに追加された新色、パールホライゾンホワイト(画像:ホンダ)

 

実はかつてのダックスを4台乗り継いだ筆者ですが、やや大ぶりとなったダックス125にまたがっても違和感はゼロでした。かつての記憶が蘇るバランスの取れたライディングポジションと、足回りなどの強化ぶりにまず感動。さらに細部を見ると、往年モデルと比べ溶接部なども実に細やかに作られており、「これはヒットしないはずがない」と確信しました。

かなりロードスポーツよりのダックスに振り切った仕様ではありますが、筆者が思う現役の小型ミニバイクではCT125ハンターカブと並ぶ「面白いバイク」だと思っています。

▲イグニッションをオンをすると、速度表示部がまばたきするデジタルメーター(画像:ホンダ)

 

▲純正アクセサリーの時計やギアポジションを追加表示できるメーター(画像:ホンダ)

 

▲ラウンド形状のコンパクトなLEDヘッドライト(画像:ホンダ)

 

▲ヘッドライトとのデザインの統一感を持つテールランプ(画像:ホンダ)

 

▲倒立式のフロントフォーク(画像:ホンダ)

 

▲ツインリアショック(画像:ホンダ)

 

▲フロントの足回りには2ポッドキャリパーのディスクブレーキを標準装備(画像:ホンダ)

 

▲リアの足回りにも1ポッドキャリパーのディスクブレーキを標準装備(画像:ホンダ)

 

▲レスポンスの良い空冷4ストロークエンジンを搭載(画像:ホンダ)

 

■なんとダックスの電動モデルも登場!

言わば、半世紀のときを経てダックスは随分と進化したカタチで再び登場してくれたわけですが、「進化系ダックス」に関するトピックは他にもあります。

前後しますが、2001年に開催された「東京モーターショー」のホンダブースには、ダックスを冠した電動バイクを参考出品されました。その名もe-DAX。外見に往年のダックスの面影はさほど感じられないものの、バイク全体を伸縮・折りたためる仕様。

ダックスの当初のコンセプトが反映されたモデルでした。

 

▲「2001年東京モーターショー」に参考出品されたe-DAX(画像:ホンダ)

 

▲2023年より、中国市場限定で販売が始まった電動バイクDAX-e(画像:ホンダ)

このe-DAXは残念なことに市販化には至りませんでしたが、2023年にはこれまた衝撃のニュースがもたらされました。中国市場限定の電動バイク、DAX-eが発売されたのです。
近未来的なデザインですが、往年のダックスのTボーンフレームを模し、足つき性能にも優れた構成。初代からのダックスファンも納得するはずの、もう一つの「進化系ダックス」です。
ちなみに、このDAX-eは一部業者が逆輸入販売しており、日本国内でも入手可能です。税込販売価格は39万6千円。バッテリーや充電器を別途16万円ほどで購入する必要があるため結構値は張りますが、ダックスの長い歴史の中では意義深いモデルと言って良いでしょう。

■欧州モデルでは新色登場。さらに進化を遂げるダックス125

現在、ダックス125はヨーロッパ、アメリカ、アジア地域にも輸出されていて、2026年のヨーロッパモデルではキャンディ・エナジー・オレンジ、パール・ホリゾン・ホワイト(日本の現行モデルと同色)の2色が新色として追加されました。これまでのダックス125の印象をガラリと変えるこの新色、日本でも発売してほしいと願う声も多いようです。

▲2026年、ダックス125のヨーロッパ向けモデルで新色として追加されたキャンディ・エナジー・オレンジ(日本未発売)(画像:ホンダ)

 

ここまでダックスの57年の物語を紹介しましたが、ダックス125のヒット、中国市場における電動バイクDAX-eの登場などを見れば、現代に進化したカタチで蘇り、レジャーバイクの騎手として広まった時代とはまた違う道を歩み始めているようにも感じます。

モンキーやハンターカブと並ぶ、ホンダのミニバイクの名シリーズ、ダックス。これから先の未来にもさらなる進化を遂げていってほしいと願うばかりです。

<取材・文/松田義人(deco)>

松田義人|編集プロダクション・deco代表。趣味は旅行、酒、料理(調理・食べる)、キャンプ、温泉、クルマ・バイクなど。クルマ・バイクはちょっと足りないような小型のものが好き。台湾に詳しく『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)をはじめ著書多数

 

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