蕎麦が好きでお酒が好きな僕・小宮山雄飛が、美味しいお蕎麦屋さん、そして蕎麦屋呑みの魅力を伝える新連載。
記念すべき第一回は、僕が蕎麦好き・酒好きになったルーツである『神田まつや』です。
神田まつやに初めて行ったのは、僕がまだ小学生の頃。
蕎麦好きの父に連れられてでした。
▲明治17年創業。小説家・池波正太郎氏など著名人に愛された老舗の蕎麦屋。東京都選定歴史的建造物に指定された外観は夜も情緒たっぷり
「蕎麦屋に来たら、まずはツマミを頼むんだ」
お蕎麦屋さんですから、当然蕎麦を頼もうとする僕に父は
「いいか、蕎麦屋に来たら、まずはツマミを頼むんだ」
と蕎麦屋の楽しみ方を教えてくれました。
焼き海苔、かまぼこ、焼き鳥。
どれも凝った料理ではありませんが、家で食べるのとは何かが違う。
それはたぶん、蕎麦屋さんという空間の味わいが加わっていたんでしょう。
▲「ゆばわさび」880円。日光から取り寄せた湯葉を使用。山葵醤油に負けない濃厚な味わいにお酒が進む
▲「焼鳥」1045円。大ぶりの肉にかえしを使った甘辛のタレが絡み、一度食べるとやみつきになると評判の一皿
子供ですから当然お酒は飲めませんが、カエシが効いたタレの焼き鳥は甘めで食べやすく「美味しい美味しい」と無邪気に食べる僕を見て、ぬる燗の酒をちびりと呑む父の横顔が、ちょっと嬉しそうでした。
▲旨いツマミとともに、父との思い出が重なるぬる燗の酒をちびり、ちびり
そんな父に教わった蕎麦前(蕎麦を食べる前のツマミ)の1つが「ぬき」。
天ぬきとも言いますが、温かい天ぷら蕎麦から蕎麦をぬいたもの。
メニューにはありませんが、神田まつやに来ると、父はいつも「ぬき」をツマミにお酒を呑んでいました。
◾️父に教わった蕎麦前の1つ「天ぬき」
▲常連が頼む裏メニューの「天ぬき」。大きな海老天が二つ、三つ葉とゆずが香り、温かなつゆの美味しさに舌鼓
「旨いからちょっと食べてみろ」と食べさせてくれましたが、ぷりぷりの海老の美味しさもさることながら、温かい汁を吸った衣がまた美味しい。
天種(天ぷら盛り合わせ)とも違った味わいで、こういうのを知っていると、蕎麦屋呑みがますます楽しくなるんだと、今になって思います。
▲世代を超えて通う神田まつやの店主・小高孝之さんとの話が尽きない
ちなみに、最近神田まつやのご主人の小高さんに聞いたのですが、ぬきって、単に天ぷら蕎麦から蕎麦を抜いたものかと思っていたら、さにあらず。
わざわざ、ぬき用に、通常のかけ用の汁と、出汁の割合いを変えているんだとか。
子供の頃から食べていたのに、全然知りませんでした!
蕎麦前の世界、やっぱりまだまだ奥が深い。
うちの父は決して「蕎麦はこうやって食べるものだ」と蕎麦屋の流儀のようなものを押し付けることはありませんでしたが、蕎麦屋での父の頼み方・食べ方を見て、自然と僕もあれこれ覚えてきたんだと思います。
▲大人になり、いつの間にか僕も、最初はゆばわさびや焼き鳥でビール、ぬきでぬる燗、ほどよく酔ったら、最後はもりで締めるという、父と同じ流れで蕎麦屋呑みを楽しんでいます(ほどよく酔うというのがちゃんとできているかは微妙ですが……)。
◾️ほどよく酔ったら、最後はもりで締める
▲「もりそば」880円

蕎麦粉10:小麦粉2の通称「外二」で打たれた蕎麦は喉ごしもよく、あれこれ食べて呑んでも、やっぱり最後は蕎麦で締めて毎回大満足で終わる。
蕎麦屋呑みの醍醐味を存分に楽しめる老舗の名店です。
▲[食楽web]
<文/小宮山雄飛 撮影/C STUDIO 中村優子>

神田まつや 本店
住所:東京都千代田区神田須田町1-13
TEL:03-3251-1556
営業時間:火〜金曜11:00〜20:30(L.O.20:00)
土・祝日11:00〜19:30(L.O.19:00)
定休日:日・月曜
>>神田まつやホームページ
●著者プロフィール

小宮山雄飛|ホフディランのVo&Key担当。ミュージシャンの傍ら、グルメ番長として食のシーンでも活躍し、様々な雑誌やWEBサイトでの連載、レシピ開発なども行う。著書には『旨い!家カレー』『レモンライス レシピ』『小宮山雄飛 今日もひとり酒場』など。テレビ、ラジオ番組の出演なども多数。
>>ホフディランofficial サイト >>@yuhikomiyama
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