■暗闇の水の感触はひと味違う
▲純度100%の闇
“暗さ”にも段階があります。例えば夜は暗いですが、月や星、信号機やビルの照明などがあり、光はゼロではありません。しかし、このファイブワンラボは、わずかな光もない純度100%の真の闇。時間が経っても目が慣れることはなく、ひたすら真っ暗。目を開けていても閉じていても変わりません。
「何も見えない!」
「やば、どこ!?」
戸惑い、思わず心の声を漏らす参加者たち。自分の体も見えず、今いる部屋の形も広さもわからないので、どこかで頭や体をぶつけそうで、ひたすら怖い。歩みが異常に遅くなります。
そんな中、「あれ? なにか音がしませんか?」とあっこさんの声。言われてみれば、どこからかちょろちょろと、水が流れる涼しげな音が聞こえてきます。
すり足で水音がするほうへ移動し、そーっと手を伸ばしてみると、キッチンのシンク的なものがありました。どうやらこのシンクに、蛇口から水が流れ落ちているようです。シンクには水が満たされている様子。おそるおそる手を漬けてみます。
▲暗闇の中では水の感触も新鮮
「うわ、冷たっ」「ふわふわしてる」
次々と感想を述べ合う参加者たち。水一つでここまで盛り上がれるとは……。五感ならぬ“四感”がいやが上にも研ぎ澄まされるせいか、普段より水の感触が一段と鋭敏に感じられます。特に手の甲でゆっくり水に触れると、ゼリーのようにぷるんと柔らかい感触がすることがわかりました。
■お待ちかねのコーヒータイム
▲大きな木のテーブルを発見
そこからさらに移動すると、腰の高さの位置に、なにか触れました。どうやら平べったく厚みのある木製の大きなテーブルのようです。ぐるりとテーブルを囲む我々6人。後方に手を伸ばすと、そこには背もたれとアームレストが付いた木製の椅子が。さっそく手繰り寄せ、座面の位置を確認して、ゆっくり着席します。
ようやく落ち着ける状況になり、ホッと落ち着く参加者の面々。いよいよ念願のコーヒータイムです。まずあっこさんから「OGAWA COFFEE LABORATORY」のコーヒー豆が順番に回されるので一粒手に取ります。
▲コーヒー豆を確かめる参加者たち
豆の感触を確かめ、香りを嗅いで、さらに他の参加者の豆と交換してみたり。「これはブラジル産?」「あ、だいちゃんの豆は香りが強めだ」などと、参加者同士の交流も自然に生まれ始めるのもこの頃から。
さらに豆が詰まったコーヒーミルで、各自ガリガリと手回しでコーヒーを挽きます。またたく間に暗闇の中にコーヒーの芳醇な香りが満ちてほっこりした気分に。
挽き終えた豆を回収したあっこさんがコーヒーを注いでくれ、「では、どうぞお召し上がりください」と、紙のコースターとコーヒーカップが回ってきました。
▲挽きたての豆で淹れたコーヒー
文字で書くと何の問題もないように見えますが、実際にはテーブルのどこにコーヒーが置かれたのかも、どんな形状のカップなのかも、どこに取っ手があるのかもわかりません。熱いのか冷たいのかも不明です。
目の前で起きていることと、その事実を受け止めて対応すること。このギャップに混乱してしまいます。人は視覚から8割の外部情報を得ていると言われますが、“コーヒーを飲む”という簡単な行為ですら、暗闇だと途端に大冒険になってしまうのです。
その意識のギャップを埋めてくれるのが、近くにいる人の“導き”。「たぶん、福助さんの右手の横あたりにカップを置きました」と言葉で教えてくれたり、指先を軽くつまんで回ってきたコーヒーカップに触れさせてくれたり。そういった小さな行動が、ものすごくありがたい。暗闇の中では、親切心こそが光明になるわけです。
そうして味わう「OGAWA COFFEE LABORATORY」のコーヒー。さすがの旨さです。聞けば、豆は日本人の味覚に合わせて特別にブレンドされた「ハウスブレンド京都」を使っているとのこと。フルーティーで余韻が長く、しみじみ美味しい。
▲「OGAWA COFFEE LABORATORY」のコーヒーを楽しみつつリラックス
コーヒーを味わっているうちに、おやつも登場。あたりには鳥のさえずりも響いています。相変わらずの真っ暗闇ですが、まるで森の中で極上の一杯をいただいているような気分に。さっきまでの緊張がほぐれ、心が洗浄されていくような清々しい気分になっていました。
「あー、なんか気持ちいいな」
「落ち着くわー」
「もう私、目を閉じちゃってます」
みなさん日常から解放されて、すっかり暗闇の中のコーヒーブレイクを堪能しているようです。
最後にペンが配られ、紙のコースターに、いま心に浮かんだことを記します。もちろん、何も見えない状態です。心のままにコースターに思いをぶつけます。もしかしたら文字がズレているかもしれないし、読めないかもしれない。でも、いいじゃありませんか。最高の暗闇の思い出です。
■日常の世界に帰還
▲暗闇の思い出コースター。文字だけでなく、絵を描いている人も
しばらく和んだ後、また暗闇の中を出口まで歩き、80分のプログラムはようやく終了。いやー、真っ暗だったけど楽しかった!
最初にちょこっと顔を合わせただけの他の参加者たちの顔を改めて見てみると、声だけの時とはずいぶん印象が違うことにびっくりしました。たぶん全員そう思ったはず。本当に目に頼り切って生活していることを実感。
そして「伝えること」と「受け取ること」、あまり意識せずに行ってきたこの2つのコミュニケーション、どちらも今までよりもっと大事にしつつ生活していこう、と肝に銘じたのでした。
■「Dialog in the Dark 5-1=∞ Lab.」の魅力

「Dialog in the Dark 5-1=∞ Lab.」のオペレーションマネージャーの芹野晶子さんによれば、2026年3月28日にオープンして以来、すでに600人以上が来場し、暗闇コーヒー体験をしたとのこと。
「ラーメンが出来上がる3分が待てない。ついついスマホに手が伸びる。そんなせっかちな人が増えている昨今、ある意味、暗闇でゆったりとコーヒーを味わって過ごす80分間は“究極の憩いの時間”になると思います。ぜひ予約して体験してみてくださいね」(芹野さん)
忙しない日常や忙しすぎる仕事、SNSへの返信、面倒な人間関係などで心がちょっと疲れているそこのあなた、「Dialog in the Dark 5-1=∞ Lab.」に参加して、心と魂を解放させてみては?
Dialog in the Dark 5-1=∞ Lab.
体験時間:約80分間(予約時間の15分前に集合)
体験費:4,400円(税込)
対象:中学生以上
定員:8名/回
チケット:公式サイトの予約ページで事前予約
>>ホームページ
<取材・文/田代智久>
【関連記事】
◆【鎌倉・はしご酒の新聖地】鎌倉・裏通りの酒屋跡で夫婦が放つ、隣り合わせの食のエンターテインメント!
◆飲む、買う、繋がる。現代の「角打ち」は大人の遊び場!クラフトビールを知って楽しむ鎌倉の『バナバサ』へ
◆爆盛りで話題の和食処『加賀本店』(山梨)。その本質は“予約”が生む心尽くしのおもてなしにあった
- 1
- 2




























