■梁と囲炉裏が生み出す、圧倒的な没入感
▲囲炉裏を囲んで常陸牛を味わう店内。火を中心にした空間が、食事の時間をより印象深いものにしてくれる
店内に一歩足を踏み入れると、年月を重ねた太い梁と高い天井が広がり、築200年超の古民家ならではの重厚な空気に包まれます。各テーブルには囲炉裏が設けられ、火を囲みながら食事を楽しめる造りになっています。
囲炉裏を中心に構成された空間は、単なる食事の場ではなく、この店ならではの“舞台”そのもの。日常から切り離されたような感覚があり、炭火の気配を感じながら過ごす時間そのものがごちそうに感じられます。
太い梁、高い天井、落ち着いた照明、そして囲炉裏のある食卓が一体となり、常陸牛を味わう時間に深い余韻を添えています。
■常陸牛の魅力を引き立てる、零度熟成という仕事
▲冷蔵庫に並ぶ常陸牛の塊。食事の前に目にする肉の存在感が、このあとの一皿への期待を膨らませる
常陸牛は、卸業者を介さず、生産販売元から直接仕入れています。仕入れ先との信頼関係を大切にしながら、肉質や状態を見極めて厳選し、店内では零度熟成で丁寧に管理。低温でじっくりと状態を整えることで、きめ細かな肉質、しっとりとした食感、豊かな風味を引き出しています。
冷蔵庫に並ぶ肉の塊を目にすると、これから始まる食の時間への期待が一気に高まります。素材の選定から熟成、提供までの丁寧な仕事が、この店の常陸牛炭火焼のおいしさを支えています。
■囲炉裏の前に運ばれた瞬間、高揚感は最高潮に!
▲常陸牛と地元野菜が揃った一皿が、囲炉裏の時間の幕開けを告げる。「常陸牛炭火焼」4,200円(税込、写真は2人前)
この店の看板メニューは「常陸牛の炭火焼」。
この料理の魅力は、焼く前から始まる高揚感にもあります。きめ細かなサシが美しく入った常陸牛(リブロース)、鮮やかな緑のピーマン、とうもろこし、きのこ、お餅が並ぶ一皿を前にすると、網の上で焼けていく香りや音まで思い浮かび高揚感でいっぱいに。炭火は遠赤外線の力で肉の表面を香ばしく焼き上げながら、内側の水分を保ち、常陸牛ならではのしっとりとした肉質を引き出してくれます。
あわせて頼みたいごはんAセット(800円、税込)はごはん、味噌汁、サラダ、漬物付き。筑波山周辺で育ったコシヒカリを、筑波山の地下水で炊き上げています。炭火焼き常陸牛の香ばしさと、美味しい地元のごはんが重なりあうと、箸が止まらぬおいしさ!
■炭火のおいしさを支える、筑波山周辺の黒炭
▲藁で丁寧に包まれた俵詰めの炭。囲炉裏の火を支える存在にも、この店ならではの手仕事と土地の気配が宿る
この店のおいしさを支えるもののひとつが、囲炉裏で使う「炭」。筑波山周辺の炭職人が仕上げる黒炭は、火付きがよく、火持ちにも優れているのが特徴。炭火はただ肉を焼くだけでなく、香り、火加減、焼き上がりの余韻まで含めて、常陸牛の味わいを引き立ててくれます。
店内に残る、藁を編み込んで丁寧に包まれた俵詰めの炭も印象的。昔ながらの炭の風景を思わせ、合掌造りの古民家空間に深みを添えています。
■ここでしか味わえない体験は、店主の哲学から生まれる
▲店主の鬼沢一彦さん。空間、食材、火の扱いにまで、一貫したこだわりが息づいている
店主の鬼沢一彦さんのこだわりは明快です。「筑波山のロケーションの中で、飛騨高山の合掌造りの古民家という唯一無二の空間を生かし、常陸牛を炭火焼で楽しんでもらうこと」。その思いは、建物、肉、米、炭にまで一貫して息づいています。炭火焼のほか、すきやき、しゃぶしゃぶ、ステーキ、ひつまぶしと、常陸牛をさまざまな形で楽しめるのも魅力。派手な演出ではなく、本物を積み重ねることで、この店ならではの説得力が生まれています。
■五感が満たされる、筑波山中腹の一軒
常陸牛のおいしさを、ここまで劇的に体験させてくれる店はそう多くありません。外観、筑波山の景色、待合室、内装、冷蔵庫の中に並ぶ常陸牛の塊、囲炉裏の前に運ばれる常陸牛と地元野菜の一皿、炭、囲炉裏の火へと気持ちが高まっていき、最後に待っているのは香ばしく焼けた表面と、しっとりほどける肉質、そして口いっぱいに広がる常陸牛の旨み。食べ終えるまで続く食への期待と感動こそ、いちばんのごちそうなのかもしれません。『ひたち野』は、まさに“食はエンターテインメントだ”を体現する一軒です。
常陸牛料理 ひたち野
住所:茨城県つくば市臼井2103-5筑波山風返峠
TEL:029-866-1221
営業時間:10:30 - 20:30(L.O. 19:30) ※17:00以降は要予約
定休日:火曜日、偶数月の月曜日(月1回)、祝日翌日、その他月曜日
※1月下旬、7月初旬、下旬は休業期間あり
>>ひたち野ホームページ
<撮影・文/黒澤浩道>

黒澤浩道|茨城県在住 1級フードアナリスト。茨城スマートバーベキュー協会代表。バーベキューの魅力を全国に発信しつつ、フード&テーブルコーディネーターとして美しい食空間の演出も手がける。茨城の豊かな食材の魅力を広めるため、各地でバーベキューイベントを開催。パティシエとしての顔も持ち、“食の楽しさ”を多角的に伝えている。>>@hi_kurosawa
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